新型コロナウイルスの感染拡大により、OJTなどの企業内教育もオンラインへの転換を余儀なくされている。オンラインでどのようにOJTを行うのか。メンターや上司はどう関わっていけばいいのか。人事・人材開発担当者ができる支援とは。 新入社員研修に続き、オンラインでのOJTを支援している三井物産人材開発に話を聞いた。
2005年設立。三井物産及びグループ各社の人材開発・組織開発を担う。研修の企画や運営、コンテンツの開発のほか、翻訳・添削といったランゲージサービスの提供も行う。
資本金:100百万円
従業員数:42名(2020年3月時点)
三井物産グループの人材・組織開発を手掛ける三井物産人材開発において、オンライン教育の始まりは新入社員研修だった。特に、三井物産の新入社員に向けて例年10日間の集合研修を実施してきたが、今年度は128名の新入社員に対して、すべてオンラインで導入研修を行ったのである。
オンライン化の経緯について、大川氏はこう話す。
「最終的にオンライン化が決まったのは、入社式2週間前の3月16日です。その時決意したのは、『オンラインだからといって、学びの内容や質に妥協したくない』『新入社員に、オンラインだからこの程度でも仕方ないと思ってほしくない』ということでした。入社日も迫っていましたが、その日から効果的に導入研修をオンライン化するにはどうすればいいか議論しました」(大川氏)
同社としても初めてのオンライン研修。超えなくてはならない壁は多くあったが、新入社員に安全な環境で質の高い学びを提供することを最優先に動いたと大川氏。
「オンライン化の決定後、関連部署と連携して即座に動いたことで、Wi-Fiなどの機器類も全員分確保できました。オンラインツールに関しても、社内で活用されていたMicrosoft Teamsを軸にすることで、スムーズに導入することができたと思います」(大川氏)
3月31日には、密を避けたうえで新入社員を集め、機器類の配布とセットアップ、研修の説明会を行った。この説明会は、新入社員のマインドセットのうえでも大きな意味を持っていたと宮下氏は振り返る。
「マスク越しではありますが、『オンラインでも学びをあきらめない。一緒に頑張ろう』というメッセージを直接発信することができました。短いながらも、あの時間が団結力を高め、その後2週間のオンライン研修を引っ張ってくれたと思います」(宮下氏)
三井物産の新入社員研修のプログラム内容は、大きくビジネススキル系のコンテンツとマインドセット系のコンテンツにわかれる。会社の歴史や人事制度などの仕組み、ビジネスマナーやロジカルライティングなどのスキルに関しては、オンラインに問題なく移行できたという。
ただ、この研修で重要な位置づけを占めるマインドセット系のコンテンツに関しては、オンライン化に不安があったと大川氏は話す。
「新入社員研修の後半に、『初心を刻む』目的でグループワークを予定していました。6人程度の新入社員のグループに4~5年目の先輩社員をアドバイザーに迎えて、『社員としてのありたい姿』や『会社に貢献したいこと』を3日間かけて考え抜くというものです。
このようなグループワークは、新入社員研修に限らず節目研修で必ず行っており、当社のお家芸とも言えるものです。それだけ重要なコンテンツをオンライン化、それも直接顔を合わせたことがない新入社員同士に加え、顔を見たこともない先輩社員も参加してのグループワークです。本当にうまくいくのかと、直前まで心配は尽きませんでした」(大川氏)
しかし、それらの心配は杞憂に終わった。
「何より大きかったのは、先輩社員の『新入社員の成長を支援したい』という強い思いでした。コロナ禍で状況は異なるとはいえ、彼らは新入社員の良き理解者。自分の経験を踏まえて、温かく見守ってくれました。その姿勢は、オフラインでもオンラインでもまったく変わりませんでした。人を育てることを基本的な価値観と据える三井物産グループのDNAをあらためて感じました。
また、集中力を高め続けるための工夫として、トーナメント方式で成果物を競い合い、『ベストラーニング賞』を決める仕組みも取り入れました。ゲーミフィケーションの要素を加えることで、研修会場と自室との環境の差を埋めることを試みました。新入社員も、オンラインだからこそ積極的に発言しようとするなど、主体的に取り組んでくれたように思います。
例年通り集合してグループワークができる日を待つことも考えましたが、結果的にオンラインでも密度の濃い関係性が構築でき、斜めの関係にあたる先輩社員も含めた『仲間』をつくる機会になったことから、早い段階で実施して本当によかったと思っています」(大川氏)
研修を終えた新入社員は、4月13日に現場に配属された。上司や先輩と直接顔を合わせないオンラインOJTの始まりである。
事業領域が幅広い同社では、実務を通じた育成を重視しており、OJTが人材育成の根幹を担っている。初年度は3年目以上の社員がメンターになり、新入社員を1年間マンツーマンでサポートする。
「三井物産グループでは、『人の三井』と言われるように、人が財産です。したがって、新入社員を託すメンターは非常に重要な位置づけを占めており、人材育成に強い思いを持っているメンターが選定されています」(宮下氏)
ただ、今年は新入社員とメンターが直接会うこともままならない中でのOJTだ。新人とのコミュニケーションの状況やメンタル面での課題把握のため、メンター115名にヒアリングを実施したところ、例年とは異なる課題も浮かび上がってきたという。
「オンラインにおける心理的安全性の確保やコミュニケーションは大きな課題でした。一度も会ったことがないメンターに、悩みや不安は打ち明けづらいものです。また、対面なら気軽に質問できることでも、オンラインでは話しかけるのを躊躇してしまうという新入社員も多かったようです。メンターからも、新入社員の状態を把握するのが難しいという声や、リアクションが見えづらく、伝えたいことが伝わっているのかがわからないという声が多く上がりました」(大川氏)
同時に、こうした課題に対応するメンターたちの自発的な工夫も集まった。
「コミュニケーションスタイルをカジュアルにして、新入社員が話しやすい雰囲気を醸成したり、定期的に雑談タイムを設定して人となりをよく知るようにしたり、あたかも隣にいるように随時チャットで質問を受け付けたりするなど、メンターが積極的に様々な工夫をしてくれました。
また、緊急事態宣言の解除後、直接顔を合わせる機会が持てたことも大きかったです。一度顔を合わせることで、その後オンラインでのコミュニケーションになっても、心を開きやすくなったようです」(大川氏)
一方、今後の新入社員の成長を考えた時に懸念されたのが、コミュニケーションが限定的になり、狭い範囲でしかネットワークを構築できなくなくなるかもしれない点だ。
「出社すれば、フロアや会議室、食堂など様々な場面で偶発的な出会いがもたらされます。しかし、オンラインでの打ち合わせはいっそう個別の目的に限定された形で設定されることになり、メンターや上司など、コミュニケーションを取る相手がどうしても限られてしまいます。そうすると、普段接しているメンターの言うことだけが正解と思ってしまうことも懸念されました」(大川氏)
この解決の鍵は、これまで以上に「部署全員で新入社員を育てていくこと」だった。
「新入社員は毎日業務日誌を書くのですが、それをメンターだけが見るのではなく、オンラインの特性を活かして部署全員が見られるように工夫していた部署もありました。メンター以外のメンバーがコメントすることで、新入社員も組織全体で見守ってもらえていると感じられますし、相談できる関係性を複数つくることができます。部署のメンバーにとっても、業務日誌をきっかけに会話が弾み、新入社員の理解につながります。また、様々な部署のメンバーと新入社員を引き合わせて、いわば3者面談のような形でネットワーク構築をサポートしていたメンターもいました」(大川氏)
このような工夫をすることで、オンラインOJTのメリットも実感したという。
「仮説ですが、もしかしたらこれまでよりもコミュニケーションが活発になっているかもしれません。メンターへのアンケート結果からも、業務開始前後や日中に1on1を頻繁に行っていることが伺えました。こういったミーティングが気軽にできるのも、オンラインのメリットだと思います」(宮下氏)
それは、メンターにとっても大きな意義があった。
「例年に比べて、メンター側から新入社員の立場や感情を想像し、『もっとこうした方が彼らにとっていいのではないか』という提案が多くありました。これまでの当たり前が通用しなくなったからこそ、想像力を駆使して考え、実践する姿が見られました。それはメンターの成長にもつながり、今後マネジメントに携わる立場になった時にも活きてくると思います」(宮下氏)
こうした現場の積極的な活動は、人事・人材開発担当者の支援によるところも大きい。
オンライン化にあたり想定される疑問や不安に対する質問集を作成したほか、新入社員の傾向分析の共有など、変化に応じた迅速な取り組みを行っている。10-11月にはメンターへのフォローアップ研修も実施する予定だ。
「例年は、新人・メンター・上司の3者間サーベイの結果共有から、メンター同士が対話し今後のアクションプランを立てるところまで実施していました。今年は一層、メンター同士の横のつながりを設け、相互の刺激を促していくことが重要だと考えています」(大川氏)
今年度は期せずして新入社員に対する教育をオンライン化することになったが、今回の学びを今後につなげたいと宮下氏。
「三井物産グループのOJTは現場・メンターが主導していますが、人事・人材開発担当者だからこそ支援できることもあります。今後も調査やフォローアップ研修を行い、新入社員の変化や過去との比較、ベストプラクティスなどのナレッジを専門組織として現場に還元していきたいと考えています」(宮下氏)
こうして得た知見は、社内外問わず積極的に発信していく予定だ。
「当社が得た知見は、グループ内人事関係者間でのプラクティス共有はもちろんのこと、当社ホームページをはじめとし複数のチャネルで広く発信しています。そうすることで『他部署ではこんなことをやっている』と参考にしてもらえますし、『三井物産人材開発ではこのような取組をしている』と他社に理解してもらうことができます」(大川氏)
※https://note.com/mitsui_hrd
最後に、三井物産人材開発が考える企業内教育の在り方について今後の展望を聞いた。
「今回オンライン教育の良さも実感したので、オンラインとオフラインの良さをハイブリッドする方法も考えていきたいです。
今は人事・人材開発部門にとっても大きな転換期。今年を凌ぐという発想ではなく、専門組織として、どうより良くしていくかに自分たちの存在意義があると考えています。数年後に振り返った時にポジティブに評価されるよう、変化していけたらと思います」(大川氏)
[取材・文]=谷口 梨花
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1943年に設立された米国タレント開発協会(ATD、旧ASTD)は、毎年国際大会を行っているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、急遽リアルカンファレンスを中止しヴァーチャルに変更。 2020年6月1日から5日にかけて開催し、その後3カ月間、アーカイブを公開した。 最終的に5人の基調講演を含む38のライブセッションと148のアーカイブ動画等で構成され、71カ国から4,500人が参加したという。 本稿では、ラーニングの転換に参考になる3つの講演のダイジェストを紹介する。
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