2020年4月22日、学びのオンライン化をオンラインで考えるイベント「JMAMオンラインカンファレンス on Zoom」が開催された。本稿では、当日のセッション3、元ミネルバ大学日本連絡事務所長の山本秀樹氏の講演より、同校における、答えのない問題を解ける人材が育つオンライン授業とプロジェクト学習による教育法を先行事例として紹介する。
應義塾大学経済学部卒、ケンブリッジ大学経営管理学修士。東レ、3M Japanを経て独立。AMS合同会社代表。2015年から2017年までミネルバ大学の日本連絡事務所代表を務める。著書に『最難関校ミネルバ大学式思考習慣』(JMAM)、『世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ』(ダイヤモンド社)がある。
Minerva Schools at KGIは2014年9月に開校した全寮制の4年制総合大学。2019年9月現在、約600名(約120-200名/学年)の生徒が学ぶ。キャンパスを持たず、約78%(2016年度入学実績)が留学生という国際性に富む環境で、全学生が一緒に4年間で7つの国際都市を巡回しながらクラスメイトと共に学習・居住。現地の企業・NPO・行政機関、研究機関等との協働プロジェクトを行う実践的なプログラムと、“学習の科学”をベースに設計されたオンライン学習プラットフォームを用いたカリキュラムを採用。欧米の経済・教育メディアから「高等教育を再創造した大学」として高い評価を得る。
ご紹介に預かりました山本です。5年ほど前にミネルバ大学に出会い、日本での認知活動に務めてきましたが、オンラインとオフラインを効果的に組み合わせて教育を行っているということを伝えきれないままコロナ禍に入り、ミネルバ式の学びをいよいよしっかり伝える機会があれば、と思っていた折にこのような企画をいただき、とてもうれしく思っております。
最初に15分ほど、今、社会で起きている変化と、それを踏まえたミネルバ大学の教育についてお話ししたいと思います。
ミネルバ大学の設立背景には、昨今、世の中の流れが大きく変わってきているということがあります。情報技術の進化と生活への浸透が進み、仕事に求めるスキルを大きく変えてきています。以前のビジネス環境においては、ルールを守り、専門知識をしっかり覚えて、決められた作業を熟練すればよかった。こういうことが「仕事ができる」ということでした。
ところが、最近グーグルの自動翻訳など試された方はわかると思いますが、正確性が数ヶ月前より飛躍的に上がってきています。一定のルールに基づき、知識を覚えてミスなく何かをやるということは人工知能がもっとも得意なことであり、24時間360日動き続け、より正確にしていくことができるようになりました。
では、人間に残された仕事や、人間がやっていかなくてはならないこととは何なのか。それは「社会に気づかれていない問題を発見すること」でしょう。決まったルールの中で何かを変えたりするのには勇気が必要で、利害関係も絡みますが、そうした中で「ここがそもそもおかしいのでは」と指摘し、解決策を設計するということ。このような、ゼロからイチをつくることは、まだまだコンピュータにはできないことです。
また、指示に従ったもの同士によって生まれた対立を、「そもそも我々は何のためにこの仕事をしているのか」といった上位の目的に基づいて調整することも、人間にしかできないと言われています。
これは様々なところで言われていることで、2018年にウォールストリートジャーナルがとった調査を例に挙げれば、92%の雇用主が、技術系のスキル(プログラミングスキル・システムエンジニアリング等)も大事だが、それと同じぐらい「ソフトスキル」――人とうまくやって問題を解決していく力が大事だと答えています。しかし実際、89%の人が、「どの年齢層においても、その両面を兼ね備えている人を見つけるのは難しい」と回答しています。若い人以外にもこういうスキルが足りていない、ということです。
こうしうた時代のニーズに対してミネルバ大学は、経験からしか身につけられないといわれてきたこのソフトスキル――変わり続ける現代社会で、適切な意思決定を導けるスキル――を「思考・コミュニケーションのコンセプト」として体系化しました。そしてそのコンセプトは、科学的に実証された学習方法を、情報技術を使って行えば効果的に身につけられるということを証明しています。
具体的にどんなふうに体系化したかといいますと、まず人が個人で考える「思考技能」というのは、情報をどうやって判断し着想し、解決していくかという①「情報判断力」と②「創造的思考力」という2つの要素(コンピテンシー)で構成されている、と定義しています。
それを、人が集団の中で、自分以外の誰かを説得し、対立が生まれれば緩和し同じ方向に向かわせるための「コミュニケーション技能」は、③「情報発信力」と④「統率/協調力」の2つのコンピテンシーに分類しました。
体系化されている必要があるため、ミネルバ大学では実際には各コンピテンシーをそれぞれさらに細かく分けており、たとえば「情報判断力」は、次の大まかな3つの思考の動作で構成されていると分類しています。3つとは、その情報は信頼できるかという「情報の検証」、なぜ相手がその情報を伝えようとしているのかという「意図の確認」、そのうえで情報発信者にどう応えるのが適切なのかという「判断の優劣」(優先順位付け)です。
そして、こういった思考動作を誰もが納得のいく形で行うには知っておくべき知識があり、それが思考動作を構成している「コンセプト」です。たとえば情報の検証の際には、どんな主張をどのように伝えようとしており、その主張を支えるにはどんな情報が必要で、どんな質の情報があるのか。それは意見なのか事実なのか、科学的に証明できるデータなのかといった区別をする思考習慣を身につける必要がある、といった具合です。
一つ例を挙げれば、物事を判断する際に、直接的影響と複合的影響を考慮すべきというコンセプトがあります。たとえば、医者が患者に薬を処方する際、「アレルギーはありますか?」「今、飲んでいる薬はなんですか?」ということを聞きますが、これらはそれぞれ、直接的影響と複合的影響を調べているわけです。
このコンセプトを、マーケティング部長として戦略の意思決定をしようとする際に当てはめてみましょう。直接的影響はそのメリット・デメリットでいいわけですが、複合的影響とは何でしょうか。医者の場合には、患者が今飲んでいる薬とこれから処方する薬が組み合わさるとアレルギーが生じてしまうかもしれない、ということです。ではマーケティングの場合の複合的影響というのは何か。応用できますね。答えは皆さんで考えてみていただけたらと思います。
これらのコンセプトは、どういう風に学べば効果的なのでしょうか。
「知識」を学ぶうえで効果的な学習法については科学的な研究があります。情報を一方的に講義形式で伝達してテストする方法ですと、半年後、人に説明できるほど覚えている生徒は10%ほどだった。他方、事前に課題を与えておいて、小グループでディスカッションをしながら学びあい、授業中は分からないところだけを先生がフォローをするという形式をとると、半年後、70%ほど、人に教えられるレベルで知識が定着しているという研究結果です(E.Mazur,2001他)。
これをミネルバ大学はオンラインでやることによって、効果的に実行しています。対面式の授業では、先生によるバラツキや、よく話す生徒と話さない生徒というブレが出るのですが、情報技術を使うことによって、こうした情報設計から実際の授業のデリバリー、そして綿密なフィードバックのサイクルを回すことで効果的な学習を実現しようとしています。
具体的には、同じ教科を教える教員は全て同じプラットフォームで、授業進行と授業設計を共有しています。特定の考えを持った個人への質問、グループワークを行うタイミングや、あまり発言していない生徒をいつ当てるかというところまで組み立て、共有するのです。
授業は90分ですが、教員は連続で4分まで、合計でも10分以内しか話してはいけないことになっています。学生が話した際には、リアルタイムで他の生徒から反応をもらえるようになっています。このような、様々なファシリテーション機能を充実させて、生徒の脳みそが常に動く環境をつくり出しています。
そして、学生同士のディスカッションの中でどれだけ一人ひとりの学生がコンセプトを理解しているかを、先生がルーブリックと呼ばれる定性的評価――1が「まったく理解できていない」、5が「大変すばらしい」というような5段階で評価してフィードバックしています。
生徒だけではなく先生にも評価は共有され、どの生徒がどのタイミングでどんなことをいって、先生からどういうフィードバックを受けた結果、どれだけ能力を伸ばせたかということがデータとして残るという仕組みになっています。
その結果、内外で高い評価を受けています。アメリカで約500校、10年以上実施されているクリティカル思考と問題解決力、筆記による表現力を見るテストCLA(Collegiate Learning Assessment)の結果において、入学時は変わりませんが大学1年の際にすでに他大学の学生と比べて約7倍伸びています。また、一過性のテストだけでなく8週のインターンシップを受け入れてくださった企業や行政機関・研究所からも高い評価を得ています。
まとめになりますが、前半としては以下をお話ししました。
① 人に求められるスキルが変わっているということ。
② ミネルバ大学の実践のように、情報技術によって学習効果の高い学び方は提供しやすくなりました。高頻度の事実に基づくフィードバックや、授業設計の共有・ブレ幅の少ない評価が実現されています。
③ そして、それらは第三者機関や学外の協力機関に認められています。
「押さえどころ」を意識できる、ということがあると思います。たとえば、私は事業開発の仕事を長年経験しましたが、何年もやっていると、勘で判断するようになります。過去の経験からなんとなくこれは筋がいいなどと考えがちになるのですが、実際には自分が見えていない別の視点からの考え方があるはずです。こうした、見逃しがちな視点を強制的に作り出し、口に出すことは、そうした「学び方の作法」を理解していないとなかなかできません。ミネルバ大学の学生たちは学び方の作法を基本として学んだうえで、そういったことを、情報技術を使って何度も疑似体験できているので、リアルな場でも、いろいろな答えを見つける力がつくのです。
(後半の講義開始)
先のご質問の答えでも少し述べましたが、つまりミネルバ大学の学びの特徴は、情報技術を活用し効果的に知識を覚える(インプット)とプロジェクトで学んだ知識を実践する(アウトプット)の組み合わせであるということです。後者の「プロジェクト学習」はリアルな場で、学年を重ねるごとにより難度が上がっていきます。この「学年を重ねるごとにより難度が上がっていく、自律したプロジェクト学習に重みが置かれている点」はリン・パスケーラ全米大学協会会長をはじめ、米大学の経営層に評価されています。
プロジェクト学習の説明の前に、具体的にミネルバ大学での4年間を整理しておきましょう。1年生の時はコンセプト、「学び方の作法」を学びます。その上で2年目に専門課程、コンピュータサイエンスや人文科学、経営学などに進みますが、3・4年生は自分たちの探究学習と、それらに必要とされる専門科目や他の科目を履修します。
日本の大学を含めた一般的な大学の1~2年生は、一般教養からいくつかをとりますが、そこから学生は情報発信力などを自発的に身につける必要があります。そして3年以降から特定のゼミに入り、研究分野に師事する。ところがこれが実世界とほとんど接続していないというところから、雇用主から「即戦力ではない」という声が挙がります。
他方、ミネルバ大学の学生は実践的な知恵である4つのコンピテンシーに基づく考え方をしっかり身につけたうえで、自分の進みたい方向――経済学と文学など専攻分野とそれらを組み合わせて世の中にどんな価値を提供できるかという観点で、自分で考えて行動し始めます。教員は自身のネットワーク(リソース提供)や研究を通してサポートします。こうして、2年以降、社会との密度が濃くなっていくのです。
ちなみに、企業で働いている方に展開しているプログラム(企業リーダー養成プログラム)や修士課程(社会人対象)のプログラムもあります。特に前者は、所属企業における課題について何回かディスカッションしてもらい、オンラインシステムを使って個々の受講者の思考能力の中で弱そうなコンセプトを診断。個別の学習プログラムを用意しそれを強化していくというものです。
知識が本当に身についているかどうかを「プロジェクト学習」で実践します。リアルな場なのですが、ここでも情報技術を使います。学生別のコンセプトに対する理解度データを参照し、プロジェクトをカスタマイズして提供しているのです。
たとえば授業に紐づいた必須のプロジェクト学習がありますが、そこでまだまだ弱みがあると感じた学生たちにそれを補うプロジェクトがあり、さらに高めたいスキルがあれば、学生が自ら発案して学習要件を満たせば単位として認められるプロジェクトもあります。
非常に柔軟性に富んでおり、たとえば1年次には幅広い分野での学習が可能で、広告代理店、マイクロ・ファイナンス、クラウド・ファンディング、科学的リサーチや舞台芸術、ロボット・プログラミングを通じて、必要なコンセプト強化に応じたプロジェクト学習ができます。
リアルな場ではありますが、授業はオンライン化していることにより物理的な制約を受けません。ですからサンフランシスコだけではなく、2年生以降、国・地域を変えて旅をしながらプロジェクト学習ができます。一部の文化圏でうまくいくことも、他の文化圏ではうまくいかないということを、実体験を通じて学ぶことができます。4年間で7つの都市を行き来するのはストレスがかかり、状況判断と試行錯誤の連続経験ですので、変化に強い人が育まれます。
オンライン授業とプロジェクト学習のメリットは、まとめると以下になります。
① 覚えただけでは使えない・柔軟性がない、というのを原体験して腹落ちできる。
② 授業のオンライン化によって実現できている、4年間で7つの都市を行き来しながらの状況判断と試行錯誤の連続経験によって、変化に強い人が育まれます。
③ そのうえで自分はどういう特徴やクセがあるかというのが、学習履歴、データベースに残っているので、基本に立ち返ることができます。
実は、オンライン授業で頭をすごく使うやり方に、学生は2回ぐらいで慣れます。しかし先生側は4週間かかります。どうしても自分の知識を教えたがってしまうのです。ファシリテートや個々人への細やかな対応に時間をとる重要性を頭ではわかっていても、実践するのはなかなか難しい。意識して順応する必要があるでしょう。
また、「研修でリフレッシュしてこい」と上司から言われることがあると思いますが、研修の成果は、研修を受けてきた人が成果が出るような環境をどう整えるのか、という要素にも左右されるので、「成果についてコミットする」ことは送り出す側の上司にとっても非常に大事、ということを、ミネルバ大学の教師や教育の在り方が示唆しているととらえると、面白いのではないかと私は思います。
これからは本当に変化が激しい時代。どうやって対応しようと考えると不安や焦りに駆られますが、2つのことをお伝えしたいと思います。
まず、身近な小さいことでもいいので自分が変化を起こす側になってみると、コンセプトの大切さに気づくことができます。2つめに、「成長する」時というのは変化に富んだシナリオがある時なので、複数の成長シナリオをもって、回復力のある人になりましょう。
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リモートワークには様々なメリットがある一方で、うまく活用できないとマイナス要因にもなりかねない。デジタルコンサルティング事業を行うプリンシプルでは4年前、「リモート経営」がうまくいかず業績が低迷。その原因分析と、成功に導くために行った改善策を聞いた。
デジタル人材、HRテック、ピープルアナリティクス、AR / VR 型トレーニング、AI 人事、エンプロイーエクスペリエンス――。デジタルテクノロジーの隆盛にともない、組織・人事領域でもデジタルにまつわる様々なBuzzword を耳にするようになりました。Buzzwordとは特定の分野で一定期間、話題になるものの、定義や意味が曖昧な用語を指します。「世の中で大きな変化が起こっているな」という感覚を抱いても――これがまさに“バズっている”状況といえますが――、変化に対応するため自社や自分にとってどんな打ち手が必要となるのか、具体的なイメージが描きにくいという人は多いかと思います。そこで本連載ではBuzzword に焦点を当て、用語の意味合いを解説するとともに、コンサルティング事例や先進活用例をもとに、各社の組織開発や人材開発の場面でBuzzwordを生かすヒントを紐解いていきます。
2020年現在、コロナウイルスが猛威をふるっている。多方面で大きな影響が出ており、私たちも、感染症の恐ろしさをあらためて実感させられることになった。いま一度感染症について考えてみたい。感染症とは、細菌やウイルスが体に入って増殖することにより起こる病気である。細菌は細胞をもつ生き物。一方、ウイルスは細胞をもたず、人や動植物の細胞の中に入って増殖していく。冬に感染症が多いのは、細菌やウイルスが、湿度も温度も低いところを好んで発生することが一般的だからだ。また、空気が乾燥していることで、ウイルスの体内への侵入を防ぐ役割をもつ人の粘液や体液の働きが低下する。そのため、人の体の抵抗力や体力が落ちやすくなり、冬は感染症のリスクが増えるのだ。
東京五輪・パラリンピックに向けて推奨されてきたテレワークによる在宅勤務は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、想定外のかたちで企業に浸透しつつあります。しかし、なかには拙速ともいえる導入事例も少なくありません。労務管理、マネジメントなど、人事はどう対応すべきでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の拡大が世の中に暗い影を落としている。欧米において感染者が急拡大しており、日本でも(本稿執筆時点では)まだオーバーシュート、いわゆる急拡大には至っていないものの、感染者数は確実に増加トレンドにある。リーマンショックを超える衝撃とまで形容されるコロナショックはいったい、いつ収束を迎えるのか。気が気でない読者も多いだろう。
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2020年のゴールデンウイークは、近年誰も経験したことがない「人の大移動をともなわない」不思議な休暇期間となった。歓迎すべき事象ではないが、歴史にこの期間のことは刻まれるだろう。政府による緊急事態宣言も5月末まで延長された。今だからこそできることを模索し、実行していきたいと考えている(読書も1つの手段であることは間違いない)。
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新型コロナウイルスの影響で、多くの企業が研修の延期や中止、計画の見直しを行っている。先が見えない状況が続くなか、企業内研修はどうあるべきか。オンライン化はどう進めていけばよいのか。「人材開発」「組織開発」を専門とする立教大学経営学部中原淳教授からの緊急提言をお届けする。