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Web Limited Series Web限定連載

2020年05月26日
  • テレワーク

社内にイノベーションを起こす異文化マネジメント

2020年4月22日、「JMAMオンラインカンファレンス on Zoom」が開催された。ここでは当日のセッション2、ホフステード・インサイツ・ジャパンの宮森千嘉子氏の講演より、イノベーションを起こすチームづくりに欠かせない異文化対応力を磨き、文化の違いを活かすポイントを紹介する。本稿では当日の内容に加え、グローバルなテレワーク環境で信頼関係を築き、維持する具体的な方法についても加筆いただいた。

宮森千嘉子氏

宮森千嘉子
ホフステード・インサイツ・ジャパン株式会社
ファウンダー

ホフステード・インサイツ・ジャパン株式会社 ファウンダー・取締役マスターファシリテーター Pontevalle パートナー
青山学院大学文学部フランス文学科、英国 アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。サントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人で社内外に対するコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括。その後現職、シカゴ在住。共著に『経営戦略としての異文化適応力』(JMAM)、『個を活かすダイバーシティ戦略』(ファーストプレス)がある。

イノベーションと異文化の関係

「イノベーション」という言葉を造ったオーストリアの経済学者・シュンペーターは、「イノベーションには、0から1をつくり出す創造的な意味もあれば、日々のちょっとした改善や変革もある」と言っています。つまり、イノベーションには複数の面があるのです。

イノベーションと異文化の関係を見ると、生まれながらの母国文化に加えて、他の国の文化を理解している人は、イノベーションを生み出すことに長けているという研究結果があります。なぜならば、他の国の文化を理解している人は、複数の視点から複合的に物事を考えることができる。つまり、イノベーションの核心である複数の視点を組み合わせて編集し、新しいものをつくり出す能力を備えているというわけです。

様々な調査によると、約80%の経営者が、ビジネスやイノベーションの成功には、文化が鍵になるといいます。激変するビジネス環境、そして多文化環境において成功するリーダーを育成することは、人事部門の仕事であるとともに経営者の課題でもあると言えるでしょう。しかし一方で、自社で文化を効果的に活用できていると考えている経営者は、約35%しかいないようです。

本日は、「文化」について一緒に考え、次の3つのゴールを設定してみたいと思います。
① 国の文化がなぜ、私たちの行動に影響を与えるのか、その理由を一つ以上、説明できるようになる
② ツール(ホフステードの6次元モデル)を使って日本と他国の国民文化の違いを一つ以上、説明できるようになる
③社内でイノベーションを起こすために、他国と相対的に比較した日本の国民文化をどう使うか、アイデアを一つ以上、書き出せるようになる
※編集部註:当日はブレイクアウトセッションを行ったが、本稿では割愛する。

行動に影響を与える文化

近所の中学生に「文化とは何?」と聞かれたら、皆さんはなんと答えるでしょうか。チャットに1分で書いてみてください。「生き方」「習慣で培った空気・風土」……どれも正解だと思います。グーグルで「文化」という語を検索すると、たくさんの定義や説明がヒットしますが、ある共通点があります。それは、文化は「集団」に関連する状況であること、そして「学習」するものだということです。本日は文化を「ある集団と他の集団を区別するための、心のオペレーティングシステム(OS)のようなもの」と定義しておきたいと思います。

イノベーションを考えるうえで、なぜ文化を理解する必要があるのでしょうか。それは、私たちの行動に大きな影響を与えるからです。人間の行動に影響を与える事象には、次の3つの要素があると考えられます。まず、人類という動物としての遺伝子を持っているということ。もう1つは個性です。私たちはそれぞれ異なる遺伝子を持ち、経験をして成長しているので、個性も人間の行動に大きな影響を与えます。そして3つめが、集団に共通する見えないルール、つまり「文化」です。

繰り返しますが、文化とは個人ではなく、集団に付随するものです。そして、生まれつき持っているものではなく、学習して身につけていくものです。

人間は社会的な動物ですから、家族、会社など多様な集団に属して生きています。しかし、そのなかで最も大きな影響を与えているのが「国」という集団の文化です。なぜかというと、国の文化とは、生まれて間もないころから母国語の習得とともに家庭や学校で、無意識のうちに身につけていくものだからです。

そして、国民文化には、自分では気づきにくい、目に見えないという厄介な特徴があります。しかも、普段表出するのは言葉、食事、服装、習慣といったわずかなものだけです。これは10%程度だと考えてください。本日フォーカスするのは、表出しない90%にあたる「価値観」の部分です。

価値観とは、「何が良くて何が悪いのか」「何が常識で何が非常識なのか」といったことを判断する基準です。この基準が国民文化として私たちの意識のなかに深く埋め込まれています。国民文化は見方や物の考え方が違うだけで、いいも悪いもありませんが、これはときに強い感情を呼び起こします。普段は忘れていても、プレッシャーにさらされているときや対立するときなど、思わぬところで無意識のうちに顔を出します。

文化を相対的・客観的に比較する「ホフステードの6次元モデル」

次に、日本の国民文化を相対的・客観的に他国と比較してみたいと思います。それにあたって、オランダの国際経営論/組織心理学者であるヘールト・ホフステード氏が考案した6次元モデルを紹介します。

私たち人間は、どの国の社会でも同じような課題を抱えていますが、それをどう解決するかという手法は国によって違います。「ホフステードモデル」では、そういう考え方をベースに、特に下記の6つの次元について1~100の間でスコア化し、その違いを視覚的に表しています。

①権力とどう付き合うのか
②社会に対して個人として向かうのか、所属する集団の一員として向かっていくのか
③動機付けや大切にしていることは何か
④知らないこと、曖昧なことにどう対応するのか
⑤ 時間に対してどう考えるか
⑥人生を楽しみたい本能を抑制するのか、表現するのか

なお、ホフステード氏は、2020年2月に91歳でお亡くなりになりました。彼は1980年の時点で、「人間のサバイバルは、違う考え方を持つ人たちとの協働する力にかかっている」という言葉を残しています。ホフステード氏は、もともとはエンジニアリングを専門にしており、工場の管理職などを経験しているのですが、そのときにエンジニアリングよりも、人間に関心を抱き、働きながら大学院に通って学び直し、社会心理学的の博士号を取得します。その後IBMに入社し、人事でグローバル共通の従業員満足度調査の設計などを行いますが、そこで発見したのが「国民文化の違い」でした。その後研究を重ね、構成して形にしたのが、ホフステードモデルなのです。

本日は、この6つの次元のうち、4つについて説明していきます。

①権力格差

まず、権力格差です。これは、平等・不平等という事実をどう受け止めるのかという次元です。私たちの社会は、必ずしも平等ではありません。お金を持っている人もいれば持っていない人もいる。楽器をうまく弾ける人もいればそうでない人もいる。こうした不平等という事実をどう受け止めるかは、国によって異なります。それが、権力格差が大きい・小さいという表現になります。

権力格差が小さい国では、人はできるだけ平等で格差が少ないほうが良いと考えます。反対に権力格差の大きい国は、不平等はあって当たり前なので、パワーを持っている人に頼りたい、依存したほうがいいと考える社会です。

権力格差の小さい国では、親は子どもを、先生は生徒を、上司は部下を、平等な存在として扱います。職場では参加型マネジメントが推奨されます。一方、権力格差が大きい国では、親は子どもに従順さを教えますし、学校の教室では先生が絶対的な権力者になります。職場でも、上司と部下の関係はきっちりとした上下関係が求められます。

権力格差の小さい国としては、デンマークなどの北欧諸国、ドイツ、英国、米国などが挙げられます。一方、ブラジルなどの中南米、ベトナムやシンガポールといった東南アジア諸国、中国、サウジアラビアを含む中東諸国は権力格差が大きい国です。

日本はどのくらいだと思いますか?日本は、54というスコアで、権力格差は世界の平均値からすると中央付近に位置しています。

②個人主義/集団主義

個人主義・集団主義とは、社会に対して自分が所属している集団の代表(一員)として立ち向かっていくのか、それとも個人として立ち向かっていくのか。その違いを表しています。

これを説明するにあたり、デイビッドという友人とその娘のエミリーを例に挙げましょう。デイビッドは、米国からシンガポールに赴任しており、エミリーは5歳です。赴任したばかりでエミリーにはお友達がいないので、犬を飼うことにしました。そこで、デイビッドはエミリーと2人でペットショップに行くのですが、ペットショップのオーナーから、家で飼うことができる犬の種類を提示されます。シンガポールでは、住宅によって飼うことができる犬の種類が法律で定められており※、トイプードルやヨークシャーテリアといった小型犬しか飼えないというのです。
※公団住宅では小型犬1匹のみ可、私邸では犬は3匹までで、飼うのに資格が求められる犬種もある(2020年現在)。

このことを知ったエミリーは、「なぜ、政府がそんなことを決めるの? 不公平じゃない。私は自分で飼う犬は自分で決めたい!」と言って泣き出してしまいました。

米国は、世界で最も個人主義のスコアの高い国です。一方、シンガポールは集団の調和を大切にする集団主義の国です。集団主義の国では、子どものころから自分が所属している集団の一員であるという立場で物事を考えることを学びます。つまり、状況(コンテクスト)を読む・空気を読むことがとても大事になってきます。

ビジネスでも、人間関係が基本になります。皆さんの中にも、中国やブラジルに出張したときに、ビジネス仲間と一緒に食事をしてたくさんお酒を飲まされたという経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。彼らからすると、食事を楽しむことだけでなく、その人が仕事以外ではどんな人柄なのかを冷静に観察しているのです。

一方で、米国に代表される個人主義の国では、子どもは物心ついたころから「私は」という視点で物事を考えることを学びます。Yes、Noをはっきりさせる。言ったこと、書かれた内容(コンテンツ)を重視するコミュニケーションが主体です。

日本のスコアは46で、集団主義でも個人主義でもない、中庸のポジションです。「日本人は集団主義寄りだ」とお考えになる人もいるかもしれませんが、それは個人主義の強い米国やドイツと比較した場合であって、東南アジアや中国などから見れば個人主義の傾向が強いとみられるでしょう。

日本の、個人主義と集団主義の両方の視点から物事を見ることができるという点は、強みといえるかもしれません。

また下記の図のように、①の権力格差と②の個人主義・集団主義には相関関係が見られます。右下は権力格差が大きく、かつ集団主義の国です。ここが世界の国の約70%を占めています。経営や人事に関する理論、リーダーシップ論は北米や英国、最近の組織開発に関する論は北欧から出てくることも多いのですが、それらは左上の権力格差が低くて個人主義の強い国にポジショニングしています。そう考えると、リーダーシップ論や組織開発論を集団主義傾向が高い国にそのまま適用できるのかという議論が必要になるかもしれません。

③女性性/男性性

続いて、女性性・男性性です。これは、男女の差(ジェンダー論)ではなく、競争原理の中で弱い人や力のない人への思いやりを大事にするのか、あるいは仕事中心で、達成や成功を尊ぶのかという違いです。

たとえば、月の売上トップの人を表彰する企業がありますが、こういった価値観は、男性性の社会の特徴です。一方、女性性の社会では、弱い立場の人をサポートしつつチームとして成果を上げていこうという考え方が強くなります。同じチームのなかで、もし誰かが力を発揮できないのであれば、そのサポートをしっかりしようと考える社会です。

女性性の国の代表格は北欧諸国です。北欧諸国は、高い税金を支払うかわりに、教育は無料、引退した後の年金も手厚い福祉社会というイメージをお持ちだと思いますが、弱者を支援するために高い税金を払うことを、国民が納得しているのです。

女性性の国では、仕事よりも家庭を大事にするという特徴もあります。一方、男性性の国では、生きていくうえで仕事がとても大切な要素であり、成功した人、何かに秀でた人、道を究めた人、努力した人を称賛します。そして、達成するべき目的・目標も明確です。

女性性の国は、北欧諸国の他にオランダ、ベトナム、タイといった国があります。一方、米国、中国、英国、ドイツといった国は、男性性が高い傾向があります。

では、日本はどうでしょうか。実は、日本は、セルビア、スロバキアなどとともに、最も男性性の高い国の1つです。ただし日本では、競争に打ち勝つことによって目標を達成していくよりも、自分の立てた目標を達成して、さらに道を究めることを目指すといった傾向があります。

④不確実性の回避

4つめは、不確実なこと、未経験の新しいことに対してどう向き合うかです。不確実なことを楽しむのか、それとも経験がなくて怖いから、そういう状況をコントロールする規則などがほしいのか。

不確実性回避の低い社会では、いろいろな答えが許容されます。正解もなくてかまわない。こういう社会に生きる人は、もともと人生とは不確実なものだと思っていますから、ルールなどにはこだわらず、未経験のもの、不確実なものを楽しんでしまうので、ストレスも低いし不安感もありません。よくイノベーションを起こすためには「out box thinking」が必要といわれるように、新しい手法が奨励されます。うまくいくかいかないかは別にして、とにかくやってみる。こういう社会のトップマネジメントは、戦略や方向性を示すことにフォーカスします。

一方、不確実性回避が高い社会では、正解を求めます。人生において不確実なことは「不安」だと感じるからです。この不安を解消するためのルールや形式、決まりごとなどを感情的に欲するのです。こういう社会はストレスが高く、トップマネジメントでは、日々のオペレーションに大きな関心が払われます。

不確実性回避の低い国は、北欧諸国、米国、英国、中国、シンガポール、ベトナムといった国が挙げられます。一方、これが高いのは、ドイツ、中南米諸国、サウジアラビア、タイなどです。

日本はというと、不確実性の回避の次元がとても高い国の1つに数えられます。さらに日本の場合、③の男性性とともに、不確実性回避も高いというのが特徴です。

参考までに、英国は、男性性は高いけれども不確実性回避は低い国です。昨年、ラグビーワールドカップが日本で開催されましたが、日本代表チームのスクラムは足の位置をミリ単位で調整するなど、こだわりを見せてそれが勝利につながりました。日本代表チームはいつもの練習が90%で、ゲームへの対応は10%程度だと言われていました。

一方、日本と同じ男性性が強いけれども不確実性の回避は低いイングランド代表チームは、決勝戦にまで進んだ強国ですが、練習においていつもの練習は15%程度で、残りの85%はゲームへの対応に割いたといいます。相手あってのゲームなので、ゲームを想定した練習によりウエイトを置いたのです。ともに男性性が強い日英で、このような差が見られたことは興味深いですね。

イノベーションを1つの国だけで担う必要はない

冒頭で、イノベーションには複数の面があるというシュンペーターの言葉を紹介しましたが、このモデルを確立したホフステード氏も次のように言っています。

・イノベーションには複数の面がある
・不確実性回避が低い文化は根本的なイノベーションに優れているかもしれないが、根本的なイノベーションを新たな製品やサービスにまで発展させることには不利である
・新たなプロセスを実行するには、かなりの正確さや規則正しさが必要になる。これは、不確実性回避の高い文化の方によくみられる
・英国には日本より多くのノーベル賞受賞者がいるが、日本はイギリスよりも多くの新製品を世界にもたらした。ある文化がアイデアを供給し、実行に優れた別の文化がそれをさらに発展させるという良い例である

これを見ると、イノベーションを1つの国だけで担う必要はないことがわかります。必要なのは国を越えた協働です。そのためには、お互いの国の違いについて気づくことが大切です。ホフステードモデルを使って自国と他国を相対的に理解する。お互いの国からどんな強みを持ち寄りたいのかを一緒に話していく。そして、新たに共創して価値観をつくっていく。そんなプロセスをイメージしていただければと思います。

不確実な環境下に求められるクリエイティブなリーダーシップ
※編集部注:以下、特別加筆箇所

COVID-19は、世界が同じ危機に直面する、というかつてない課題を私たちに投げかけています。この後の世界では、自己中心主義(リアクティブ)から利他(クリエイティブ)なリーダーシップがますます求められるようになるでしょう。この世界や社会の中で自分がどういう位置にあるのかを認識し、他者を支援することでチームを前に進めていくリーダーシップ。そのためにはまず、私たち一人ひとりが、自分のことをさらに良く知るために、自己に意識を傾ける「自己認識」が重要です。

「自己認識」の高い人は自分の感情が自分や他者、仕事にどんな影響を与えるかを認識しているので、他者とより深い関係を築き、適切な判断を下し支援できるため、2020年代のリーダーにとって必須科目になると言われています。ホフステードモデルをツールとして活用し、自国と他国の違いを相対的に理解することは、自己認識を高め、利他のリーダーシップをとることにつながります。

誰もが予測不可能な混沌の中にいる今は、チームメンバー1人ひとりの感情を大切にし、より深い信頼関係をつくることが大切です。特に国境を超えたチームと働いているなら、なおさらです。

そこで、ここではバーチャル環境で信頼関係を築き、維持するツールを3つ、ご紹介します。

1. オンラインミーティングのTips

次から次へと続くオンラインミーティングで、内容に集中できないという状態が続いています。開催するときには、参加者1人ひとりの存在を大切にし、今、ここに集中できるようなしかけをしてください。たとえば、次のようなものです。

【ツール①】開始時に、 参加者がミーティングに集中する工夫

例:共に深呼吸を行う。Box Breathing
簡単な呼吸法ですが、副交感神経にアクセスするので、落ち着きを取り戻し、自分自身に立ち返ることができます。
・4秒で鼻から息を吸う(Breathe in or 4 seconds through nose)
・4秒そのままホールド(Hold for 4 seconds)
・4秒で口から息を吐く(Breathe out for 4 seconds through mouth)
・4秒そのままホールド(Hold for 4 seconds)

【ツール②】参加者1人ひとりに「チェックイン」してもらう

メンバーの感情を吐露できる安心な場づくりを行います。「今の感情を天気で表現すると」などの質問を用いれば、感情を表に出さないひとも参加しやすいでしょう。
・このミーティングの目的と成し遂げたいことをクリアにする。
・ミーティングのエチケット
例:ミュートにする、発言したいときは手を挙げる
・画面共有で資料を見せるのではなく、できるだけ顔を見て話す

2. チームで「どのように働くか」を決めておく

【ツール③】Team Agreement(チームの合意書)を全員で創り、全員で実行する

チームの数値目標やゴールは文書化されていても、「どのように働くか」について時間を撮って話す機会はあまりないのではないでしょうか。しかし、国境を超えたバーチャル環境での信頼構築には、こうした文書をつくっておくことが効果的です。チームメンバー全員で「どのように働きたいのか」の対話を持ってください。同意書には、お互いが大事にしていること、お互いへの期待値や、対立が起きたときのプロトコル(取り決め)、チャットやメールの返信に関するルールなどを入れます。社是や就業規則のように完成させる必要はありません。環境に応じて変化させ、「生きた文書」として、随時追加・修正し、チーム運営に活かします。チームメンバー全員の声を取り入れ、「どのように働くか」を決め実践するのは共同責任であることを明確にしておきます。

「Agreement」(合意書)という言葉を使っていますが、コントラクトでもアラインメントでも、どんな名称でもいいです。チームとしてどういうふうに働くのかを決める文書です。Team Agreementは、クリエイティブリーダーシップのツールとしては、とてもパワフルなツールですが、危機のときに最も効果的です。

おわりに

冒頭のほうでも述べましたが、エンジニアリング、心理学、社会学、文化人類学といった多様な分野を俯瞰し、新結合してできたものがホフステードモデルです。もともとビジネスパーソンとして活躍していたホフステード氏が、フルタイムの教授職についたのは50歳を過ぎてからでした。彼は私に「全部、偶然だったんだよ」と話してくれましたが、偶然を組み合わせて新結合するという、まさにイノベーティブなことをされてきた方でした。つまりホフステードモデル自体がイノベーションの塊だと、私は理解しています。

ホフステード氏は、次のような言葉を残しています。
「もしこのモデルに皆が賛成したとしても、それは新しいものを生み出したことにはならない。批判のなかから意見を取り入れて、さらに新しいものをつくっていくことが必要だ。なぜならば、人間のサバイバルは、違う考えを持つ人と協働する力にかかっているからだ」 この言葉を以て、このセッションの結びにかえたいと思います。

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