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2020年06月08日
  • ビジネス予測

~マクロ経済から読み解く~
“コロナ・ショック”の経済的な影響と、
これから国・企業がとるべき施策

新型コロナウイルス感染症拡防止策としての緊急事態宣言は、日本経済に深刻な影響を与えた。まさに“コロナ・ショック”である。日々刻刻と状況は変化し予測も難しいなか、マクロ経済的には、国や企業にどのような政策・施策が求められるのか。エコノミストの永濱利廣氏に話を聞いた。

永濱利廣(ながはま・としひろ)氏
第一生命経済研究所経済調査部 首席エコノミスト

1971年生まれ。栃木県出身。95年早稲田大学理工学部卒業、第一生命保険相互会社入社。2000年第一生命経済研究所経済調査部副主任研究員、04年同主任エコノミストを経て08年より現職。景気循環学会理事兼事務局長、一橋大学商学部、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。

【前提:緊急事態宣言 ~発令から解除まで】

政府は、2020年4月7日、新型コロナウイルス感染症の急速な拡大を踏まえ、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。対象地域は全国で、当初は期限を5月6日までとしていたが、安全性を考慮し途中で期限を31日まで延長することとした。その後、14日の時点で感染者数の減少が見られたことなどから、特定警戒都道府県以外の39県については、これを解除。続いて21日に京都、大阪、兵庫の近畿3府県を一括解除、さらに25日には東京など首都圏の1都3県と北海道でも31日までの期限を待たずに解除することとなった。

経済が元に戻るには最低でも3年かかる

――7週間にわたる緊急事態宣言が日本経済に与えるダメージを、どのように試算しておられますか。

永濱:緊急事態宣言は解除になりましたが、経済活動は7月末までの移行期間中に徐々に緩和されることに加え、8月以降も「新しい生活様式」を余儀なくされるため、ワクチンや特効薬の普及なしに経済活動が短期間でV字回復する可能性は低いだろうと考えています。

実際、民間エコノミストのGDP予測を集計した公益社団法人日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査※」によると、5月時点では、2022年1-3月期時点でもコロナ・ショック前の2019年末の水準に戻らないコンセンサスとなっています(図)。そして、このコンセンサス通りに2020年のGDPが25兆円以上減ることになれば、近年のGDPと失業者数の関係に基づき130万人以上の失業者が発生する計算になります。

※ESPフォーキャスト調査:日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにする調査。
https://www.jcer.or.jp/esp-forecast-top

図 今後のGDP予測
――2008年のリーマン・ショックのときと比較すると、どうでしょうか。

永濱:リーマン・ショック後の日本を振り返ると、失業者は1年間で113万人増え、実質GDPがトレンドラインに戻るまでに2年の歳月を要しました。このとき震源地の米国よりも日本の経済成長率の落ち込みが大きかった背景には、輸出先を失った製造業の打撃が大きかったことが挙げられます。しかし今回のコロナ・ショックは、製造業だけにとどまらず、感染拡大を防止するために、まさに戦時中のように営業停止や外出の制限、イベント中止など、直接的にヒトやモノの流れが停滞しています。つまり、カネの流れが停滞して需要が急減したリーマン・ショック時によりも直接需要が急減しているのです。

――世界経済に与える影響も、リーマンのとき以上のものが想定されますか。

永濱:もちろんです。リーマン・ショックのときと比較すると、各国の経済対策の打ち出し方に違いが見られます。カネの流れが停滞したリーマン・ショックでは、カネを動かすための金融・財政政策が最優先となりました。一方今回は、感染拡大の防止を優先せざるを得ない状況下で、各国政府は人為的に経済活動を抑制せざるを得なくなっており、世界的な移動制限が課されています。特にEUでは、国境が復活する事態に陥るなど、第二次世界大戦以来、最も劇的な世界経済危機の引き金になると警告されているのです。

――リーマンどころではない、第二次世界大戦に匹敵する危機と捉えてもいいと。

永濱:そうです。特に今回の経済的影響は、サプライチェーン寸断や店舗営業停止等により供給面に打撃を与えているだけではなく、感染拡大抑制のための外出抑制等を通じて需要も大きく損なわれているのが特徴です。そして、これまで経験したことのないレベルの不確実性の高まりに加え、リーマン・ショック後に金融政策に頼りすぎたことによる金融市場の過熱や債務膨張等も相まって、ダメージは金融市場にも広がっています。

このため、リーマン・ショックや欧州債務危機等によって、ただでさえ長期停滞に陥っていた世界経済に甚大なダメージが及ぶことになりかねず、「鋭く・急で・深い」景気後退が長期化する可能性も指摘されています。

また、リーマン・ショック時にはG20が金融・財政政策面において高いレベルで協調することで危機を克服できました。しかし、今回のコロナ・ショックでは、ショックが起こる以前から世界が米中通商摩擦を中心に保護主義に傾斜していたこともあり、米中が互いに責任を押し付けあい、欧米でも緊密な連携を欠いています。この点でも今回の危機が第二次大戦級と言われる所以ですが、こうした危機的な状況でこそ国際協調が不可欠になります。

――そうした危機を乗り切るためには、どのくらいの期間が必要でしょうか。

永濱:冒頭にも述べたとおり、短期間でのV字回復というわけにはいかないでしょう。加えて、忘れられがちなのですが、2019年10月に消費税の増税がありました。実は2014年4月の消費増税後は、個人消費が元の水準に戻るまで約3年かかっています。今回は、消費増税から半年も経たないうちに現在の状況となっているわけで、そうした要因も加味すると最低でも3年は元通りにならないだろうと考えています。

今、求められる「有事」の政策とは

――新しい生活様式が導入されるなかで、経済の回復に年オーダーを見越すとなると、マクロ経済的にはどのような政策が必要になるとお考えでしょうか。

永濱:上記の民間エコノミストのコンセンサスを基に日本のGDPギャップを延長すると、2020年4-6月時点で、リーマン時の最大年換算30兆円超を上回る40兆円以上の需要不足となり、2021年度末時点でも20兆円以上の需要不足となります。したがって、今後打ち出される経済対策は、20兆円超の需要不足を埋める規模の財政政策が必要といえます。

そこで考えられるのが、まず、思い切った資本注入です。長期にわたって経済活動が止まると、多くの企業が資本不足に陥る事態になります。これに対して米国ではすでに事業会社への資本注入等の政策が機能していることからすれば、日本においても資本調達の厳しい企業への支援制度が必要といえます。なかでも中小企業向けには、地銀を通じた資本注入が現実的と言われており、具体的には、メインバンク等を通じた公的機関の優先株引き受けや劣後ローンの買い取り等が考えられています。

公的機関が関与すれば、資本力が弱い地銀でも企業を支援しやすくなり、優先株や劣後ローンを活用すれば、公的機関や地銀がその企業の経営権を直接握ることが避けられるし、経営権を握られずに経営責任が問われなければ、自己資本が毀損した中小企業でも資本注入を受け入れやすくなるでしょう。

――返済不要の公的資金ですね。

永濱:これまで、政府は民間金融機関による最長5年間返済を据え置く実質無利子融資を盛り込んでいますが、それだけでは立ち行かない企業を対象に、返済の優先順位が低い「永久劣後ローン」の実施を求める向きもあるのです。

実際、日本政府も経営難に陥った中小企業に資本注入する仕組みをつくる動きも見られます。5月中にも官民ファンドの地域経済活性化支援機構へ最大1兆円の資金枠を設け、1件あたり100億円規模の出資も認め、地域の雇用と経済を支える中核企業の破綻を防ぐと報道されています。

しかし、ドイツは1000億ユーロ(約11.5兆円)の出資枠、米国は航空業界だけで500億ドル(約5.4兆円)の融資と補助金枠を設けるなど、国際的に見れば日本の支援規模はまだまだ小さい。各国が「戦争」「有事」と捉えて大胆な政策を打つなかで、日本の対応は「too little too late(少なすぎる・遅すぎる)」と言わざるを得ません。

マクロ経済で雇用・採用を見ると

――相当数の失業者が出るとも予想されていますが、雇用を支える仕組みとしては、どのようなことが考えられますか。

永濱:助成金によって雇用を支えるだけではなく、職にあぶれてしまった人材への就業支援や、異分野や新しい産業に就業しやすくするための職業訓練の実施なども必要になってくるでしょう。これは別の面からみると、産業構造の変化に伴う労働市場での人材の流動性の高まりを支援する政策といえるかもしれません。

――労働市場での人材の流動性が高まるとどうなるのでしょうか。

永濱:日本の企業で賃金が上がらない理由の1つに、雇用の流動性が低いことが指摘されています。経営者側からすると、流動化は必ずしも喜ばしい話ではないかもしれませんが、実は労働人口が流動しない状況が、日本経済の長期低迷を招いているといえなくもないのです。

国際的に見て雇用の流動性(同じ会社で働く年数が長い・短い)と経済成長率を照らし合わせると、明確な相関関係がみてとれます。雇用の流動性が高いと成長率は高く、逆に低いと成長率は低いのです。雇用の流動性が高いということは、成長分野に優秀な人材が集まることを意味しますから、結果的に経済成長率も高くなるのでしょう。日本の労働者は、年功序列や退職金制度によって、長く働けば働くほど恩恵が大きいと感じますが、この考え方はマクロ経済的に捉えると、成長の足を引っ張っている要因ともいえるのです。

また、最近テレワークが急速に浸透していますが、これによって、いかに成果につながらないムダな仕事が多かったかを実感している経営者も多いことでしょう。ムダな仕事をしている人たちを本当に必要とされている、成果を生み出す仕事に従事させるための教育や再配置についても、経営的な視点から真剣に考え直す時期がきているのではないでしょうか。

――新卒者の採用に関してはいかがでしょうか。採用を抑える動きの拡大が懸念されますが。

永濱:過去の失敗は二度としてほしくないと思います。私は、いわば就職氷河期世代ですが、このときは、たまたま自分が就職する少し前にバブルが崩壊したからそういう状況になったのです。今回のような状況下でも、罪なき新卒者の採用を安易に絞るのではなく、もう少し先を見据えることが大切です。安易に採用を絞ると、将来のロストジェネレーションを生み出してしまいます。これが結果的に雇用の不安定性をもたらし、少子化に拍手がかかり、ひいては日本経済は縮小してしまいます。よって、このような状況下でも各企業は、新卒者の採用を社会的な義務として捉えていただきたいのです。

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2020年4月22日、「JMAMオンラインカンファレンス on Zoom」が開催された。ここでは当日のセッション2、ホフステード・インサイツ・ジャパンの宮森千嘉子氏の講演より、イノベーションを起こすチームづくりに欠かせない異文化対応力を磨き、文化の違いを活かすポイントを紹介する。本稿では当日の内容に加え、グローバルなテレワーク環境で信頼関係を築き、維持する具体的な方法についても加筆いただいた。

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リモートワークには様々なメリットがある一方で、うまく活用できないとマイナス要因にもなりかねない。デジタルコンサルティング事業を行うプリンシプルでは4年前、「リモート経営」がうまくいかず業績が低迷。その原因分析と、成功に導くために行った改善策を聞いた。

2020年05月22日
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新連載 “Buzzword” から人材育成の未来を読み解く 危機のいまだからこそ テレワークを再考・深掘りする

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気づきのエンタ HEALTH お悩み解決健康法 感染症予防につながる「免疫機能」の高め方

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2020年05月22日
  • テレワーク

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2020年05月22日
  • ビジネス予測

続 書籍に学ぶ ビジネストレンド 第12回 「想定外」と どう向き合うか

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2020年05月22日
  • テレワーク

(連載より)第82回:『マネジャーにすべてを背負わせるのは、もうやめよう。最軽量のマネジメント』

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  • テレワーク

(連載より)第81回:『テレワークの切り札! Office365 Teams 即効活用ガイド』

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