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米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。『Learning Design』の連載『Learning Report from ATD』3-4月号掲載の記事に、未公開部分を加えた詳細版の後半です。
今回は、「ATD 2018 Japan Summit」のシーンから、HRのプロがとくに潮流を感じた点について語り合いました。
2018年12月に行われた「ATD 2018 Japan Summit」では、ATD代表のトニー・ビンガム氏が「リスキリング、アップスキリング、ライトスキリング」について語りました。今の仕事をこなすために適切なスキル「ライトスキル」を身につけるだけではダメで、「アップスキル」(現在持っているスキルの強化)や、まったく新しく必要とされるスキルを磨く「リスキル」も求められています。
「アップスキル」とは、AI技術や自動化によって必要となる新しい業務の仕方(Human +Machineの働き方)に対し、現在すでに持っているスキルを強化すること。「リスキル」とは例えばデータ収集の仕方、AI分析ソフトウエアの使い方、AI分析に対する質問課題の設定力などを指しますね。
多くの企業ではまだアップスキルやリスキルのトレーニングに関してほとんど議論できていませんし、ライトスキルすら見極め不足というのが実情です。ライトスキルのニーズ分析をすることもなく、昔から行っている研修をそのまま続けているケースも多いようです。
一定数の社員に同じ内容の教育を行う階層別研修は日本企業が得意とするところでした。20世紀型製造業モデルには非常に合っていたと思います。
しかし時代が移り変わったいま、本当に必要なライトスキルとは何か、さらにパフォーマンスを上げるために必要なスキルとは何かをとらえるべき段階になっているのですね。
1つの事業部でうまくいった人材育成制度を他の事業部にも展開する、というやり方が多いな、とも感じます。現場や役割によってニーズは違うので、よりマーケティング的な発想を取り入れることが大事だと思います。
EUサミットに登壇したカリフォルニア大学のアンジェラ・ストッパー氏の講演は、ジャパンサミットでも盛り上がりましたね。
アンジェラ氏の「YOU、ME、WE」の話はよかったですね。米・ロミンガー社の学習フレームワーク「70:20:10」は、1990年代に提唱され、日本でも定着しつつあります。リーダーシップが育つ機会について調査したところ「70%は経験(インフォーマルラーニング)、20%は専門家とのふれあい、10%は研修(フォーマルラーニング)」という結果が出た。L&D(人材開発)は3つをどうつなぐかを設計すべし、と長らくいわれていました。
ところがアンジェラ氏が調査したところ、フォーマルラーニングのとらえ方は人それぞれだとわかりました。さらにフォーマルラーニングについて「L&Dが企画・実施するもの」ととらえている場合、学習者の学びの比率は20%以上に達していた。
そこで、彼女が提案した新しいフレームが、「YOU、ME、WE」(図)です。
「70:20:10」はL&D側から見たフレームですが、「YOU、ME、WE」は、学習者自身を指す「ME」が真ん中に位置しています。「学習者が中心で、L&Dは研修のみならずインフォーマルラーニングやソーシャルラーニングなども視野に入れながら学びをサポートする側」と考えては、という話でした。「70:20:10」で区別するのではなく、ラーニング全体を構造としてとらえた変革が必要ですね。
L&Dは研修を中心に考えがちですが、パーソナライズ化がますます進む今、「ME」を中心にすることで、「YOU(フォーマル:会社が提供する学習コンテンツ)」へのニーズも、「WE:協働で学ぶ部分」も違ってきます。集団に対する十把一絡げ的なアプローチが通用しなくなってきていること、また、テクノロジーによって、「ME」中心としたアプローチが可能、かつ重要になってきている点を彼女の話は示唆しており、発想が変わりました。
L&D担当自身の成長についてのトニー氏の言葉も心に残りました。「L&Dが経営のパートナーになる必要性はますます高まるはずだ。L&Dこそビジネスの環境変化をとらえ、経営陣とアライメントできるプロにならなければ」という内容でした。私たち日本のL&Dには、そういったビジネス的な視点が不足しているのではないかという危機感も感じています。
経営陣とアライメントする際に気をつけたいのは、なかには「人手不足」と「人材不足」を混同している経営者もいることです。人材不足はスキルや専門性などにひもづく問題ですが、人手不足は「何人採用すればいいか」という短期的な問題に過ぎません。人手不足だからといって人を採用すれば解決するというものではありません。
だからこそL&Dは、「このビジネスを実現させるにはこういう課題があるから、そこに必要な人材をこうやって育成しましょう」と、専門家の立場から提案できなければ。特に今後、比重を占めるのがミレニアル世代の育成です。
彼らは自ら学ぶ意欲が高いだけでなく、検索能力も優れており、学習コンテンツを自由に得られる環境にあります。無償のコンテンツが世の中に溢れているいま、企業のL&Dが学習を提供するときには、「これはあなたにとって必要な学びだ」というメッセージと、「仕事をするうえでこのように役立つ」という効果の2つを明確に示す必要がある。それができないと、L&Dの存在意義が問われてしまうのだろうな、と思います。
やはり私たち自身が学び続け、進化しなくては。トニー氏は最後に、「L&D担当こそキャリアにオーナーシップをもて」というメッセージを贈ってくれました。そのためには自分に投資し、専門家に話を聞きに行くことが重要だ、という話でした。
L&D担当として日々、組織や従業員のことを考えていますが、「自分はこの先、何を実現したいのか」「どんな学習をし、どんな人とコラボレーションしていくか」について自らに問う機会になりました。実際にネットワークする場にもなり、非常に実りの多い会でした。
「2018 ATD European Summit」については前編をご参照ください!
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米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回は、2018年に行われた「2018 ATD European Summit」についての座談会。EU圏と日本の人材開発の潮流には、どんな違いがあるのでしょうか。 『Learning Design』の連載『Learning Report from ATD』3-4月号第5回(最終回)に未公開部分を加えた詳細版でお送りします。
この連載では米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回取り上げるのは、人材開発が持つべき専門性と新しい役割について。時代の変化にあわせ、アップデートすべきものとは。『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』第3回の詳細版を前編に続き、お送りします。
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この連載では米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回取り上げるのは、「Science of Learning(学習の科学)」。今年5月にカリフォルニアで行われたカンファレンス「ATD-ICE2018」でも注目されたテーマです。 (『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』の詳細版です)。
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米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、5月にカリフォルニアで行われたカンファレンス「ATD-ICE2018」より、新潮流をレポートします(『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』の詳細版です)。前回記事では基調講演について解説しました(こちら)。
今回は、米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、5月にカリフォルニアで行われたカンファレンス「ATD-ICE2018」より、新潮流をレポートします(『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』の詳細版です)。