REDPIXEL.PL/Shutterstock.com
米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回は、2018年に行われた「2018 ATD European Summit」についての座談会。EU圏と日本の人材開発の潮流には、どんな違いがあるのでしょうか。
『Learning Design』の連載『Learning Report from ATD』3-4月号第5回(最終回)に未公開部分を加えた詳細版でお送りします。
2018年10月にアムステルダムで開催された「2018 ATD European Summit」では、学び方や働き方の変化について、現在と未来をとらえながら議論していましたね。
今回、よく話題に上がったキーワードはジェネレーションダイバーシティでした。EUでは世代を超えて多様な働き方が広がっていますが、とくに若年層ではフリーランサーになる人が増えています。世界的に見ても、2015年時点ですでに就業人口の4分の1がフリーランサーといわれている。サミットでは、その傾向を身近な問題としてとらえていました。
たとえばEUではインターネットで単発の業務を請け負う「ギグエコノミー」が広がっていますが、ワーカーたちの学びの機会やキャリアをどうつくっていくかについて、真剣にディスカッションしていました。日本ではまだほとんど議論されていない部分です。
EUは若年層の失業率が高いことも影響していると思います。人々が企業に雇用される以外の働き方を模索するなかで出てきたテーマではないでしょうか。
若年層の話題といえば、ミレニアル世代がパネラーとなるセッションが印象的でした。年配層がミレニアルを語るのではなく、ミレニアル自身が等身大の言葉で話す。その試み自体が面白かったです。尊敬するリーダーを聞かれたとき、彼らが著名人ではなく近しい人をロールモデルとして挙げていたのが印象的でした。
EUのダイバーシティには、どの世代にも多様な人がいるという前提があります。パネラーのセッションでの回答が人によってさまざまだったように、ジェネレーションダイバーシティについても「一人ひとり違うのは当たり前だから、画一的な答えはない」という意識を感じました。
「ダイバーシティはファクトだが、インクルージョンはストラテジー(戦略)だ」という言葉もありました。ダイバーシティは放っておいても進みますが、インクルージョンは意識的に進めないとうまくいかない。いかにインクルードし、パフォーマンスを上げるかは戦略です。
EUと比べ、私たち日本のL&D(人材開発)は、ミレニアル世代の研究が進んでいないと感じました。新入社員研修は行っていても、コア人材となりつつあるミレニアル世代をどう育成すべきかについては、ほとんど議論されていません。彼らがキャリアを積み上げられる環境づくりについて、真剣に取り組むべきですね。
アジアのL&Dは、若手よりリーダーの育成をメインテーマに掲げることが多いですが、EUの成熟国ではフォロワーのパフォーマンスをいかに発揮させるかに重点を置いています。その前提が違うがゆえに、テーマ設定も先に進んでいるのでは。日本は20世紀の製造業モデルを前提に制度やしくみを考える人も多いですが、考え方をシフトしなければ、と感じました。
もちろんEUにも成熟国ならではの悩みや課題があるのですが、未来に向かって前提を置き直し、考え方をシフトしている印象を受けましたね。
学習におけるデジタル活用についても、EUサミットでは「デジタルフルーエンシー」という言葉を使っていました。デジタルを使うこと自体はもはや当たり前で、いかに使いこなしていくかという段階にきているようです。
日本では「ようやくeラーニングを導入しました」という話も聞きます。いまだに集合研修を中心とした考え方が根強く残っているせいでしょう。
今まで行ってきたものを続けるのは楽だからでしょうね。デジタルを使って個々にパーソナライズした学びを提供するとなると、大きな変革が必要になりますが、新しい学びが求められる環境になったのだという前提に立ち、パラダイムの変化を意識する必要があると思います。
AIを活用したアダプティブラーニング(個人に合わせて提供する学習法)などに関する技術的な知識はもちろん、L&Dの立場からいかにキュレーションするかも常識になってくるでしょう。
世界でもいち早く超高齢社会に突入した日本としては、シニアの学びの観点から、ぜひ議論したいテーマですね。
後編では、「ATD 2018 Japan Summit」を振り返ります!
米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。『Learning Design』の連載『Learning Report from ATD』3-4月号掲載の記事に、未公開部分を加えた詳細版の後半です。 今回は、「ATD 2018 Japan Summit」のシーンから、HRのプロがとくに潮流を感じた点について語り合いました。
米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回は、2018年に行われた「2018 ATD European Summit」についての座談会。EU圏と日本の人材開発の潮流には、どんな違いがあるのでしょうか。 『Learning Design』の連載『Learning Report from ATD』3-4月号第5回(最終回)に未公開部分を加えた詳細版でお送りします。
この連載では米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回取り上げるのは、人材開発が持つべき専門性と新しい役割について。時代の変化にあわせ、アップデートすべきものとは。『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』第3回の詳細版を前編に続き、お送りします。
この連載では米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回取り上げるのは、人材開発が持つべき専門性と新しい役割について。時代の変化にあわせ、アップデートすべきものとは。『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』第3回の詳細版をお送りします。
この連載では米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回取り上げるのは、「Science of Learning(学習の科学)」。今年5月にカリフォルニアで行われたカンファレンス「ATD-ICE2018」でも注目されたテーマです。 (『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』の詳細版です)。
米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、人材開発の新潮流をレポートします。今回取り上げるのは、「Science of Learning(学習の科学)」。今年5月にカリフォルニアで行われたカンファレンス「ATD-ICE2018」でも注目されたテーマです。 (『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』の詳細版です)。
米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、5月にカリフォルニアで行われたカンファレンス「ATD-ICE2018」より、新潮流をレポートします(『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』の詳細版です)。前回記事では基調講演について解説しました(こちら)。
今回は、米国の人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の日本支部ATD-IMNJより、5月にカリフォルニアで行われたカンファレンス「ATD-ICE2018」より、新潮流をレポートします(『Learning Design』で連載中の『Learning Report from ATD』の詳細版です)。