第37回 仕事が楽しくて仕方ない組織へ チームを会社の真ん中に キャリアと会社を動かした二度の訴え 三宅生子氏 両備システムズ 経営推進本部 総務・人財統括部 人財戦略部 部長 兼 Way推進室 室長
岡山県に本社を置き、情報システムサービスの提供や開発を行う両備システムズ。
同社の人財戦略部とWay推進室を統括する三宅生子氏は、営業から人事へとジョブチェンジして今年で9年目となる。
入社初期の戸惑いと異動により見えた課題への葛藤が、会社を動かす力となった。
本人ですら予測不能だった、キャリアの変遷とは。
[取材・文]=たなべやすこ [写真]=小山壯二
「なぜ女性は内勤?」疑問がキャリアの扉を開けた
岡山に本拠を構え、交通・社会インフラ事業を広く展開する両備グループ。なかでも行政や医療、福祉など公共分野を中心に、ICTに特化したソリューション提案を幅広く手掛けるのが両備システムズである。
社員数は1500名を超え、営業とエンジニアがタッグを組んで地域の課題解決に臨む。今は人財戦略部で部長を務める三宅生子氏も、入社から20年近く、2016年に人事に異動するまで営業部一筋だった。
人材育成や組織開発に対する並々ならぬ思いが配置転換につながったのかと思いきや、「そうじゃないんです」と意外な返事が。情熱は、別のところにあったのだった。
大学卒業まで、ピアノと共にする人生だった。音楽大学では練習漬けの毎日。だが卒業と同時にきっぱりと別れを告げる。就職は半ば社会勉強のつもりで、地元企業を選んだ。
1990年代の女性の就労観として、珍しいことではない。数年働いて、結婚や出産を機に離職するキャリアパスに、当事者たちもなんとなくのモヤモヤを抱えながらもそういうものだと受け入れてきた。
「このころはパソコンが普及し始めた時期。会社としても、ピアノをやっていたならと、講師職を期待していたのかもしれません」
だが配属先の営業部が、人生を変える。
「当時としては当然だったのかもしれませんが、営業に出るのは男性、女性はアシスタントと分かれていて。社内に女性の営業は一人もいませんでした」
社会に出て間もない三宅氏には、奇妙な光景に映った。そして若さゆえの率直な思いで上司に向かう。
「『どうして女性が営業ではダメなんですか?』って、食ってかかったんです(笑)。先輩や直属の上司だけではなく、営業部長にも。初めのうちは『まあまあ』となだめられつつ、しだいに『それなら一緒にやってみる?』と、現場の皆さんが教えてくれるようになったんです」