人材教育最前線 プロフェッショナル編 仕事を前向きに捉えることが キャリアを、人生を豊かにする
2003 年7月にサッポロビールから純粋持株会社へ移行し発足したサッポロホールディングス。2007 年10 月にグループの「新経営構想」を策定し、将来の「あるべき姿への必要な変化」に向けた取り組みの1 つとして、社員のキャリア形成支援に注力している。人事戦略部で人事戦略グループリーダー兼キャリア形成支援室長として活躍する村本高史氏に、社員のキャリア形成についての考えを、自身の体験を踏まえて語っていただいた。
自分が大好きなビールで人々に喜びを与えたい
村本高史氏は、自身のキャリアを振り返って、次の2つの点で恵まれてきたと語る。1つは、多くの素晴らしい人たちに出会えたこと。もう1つは、さまざまな部門を経験できたことだ。
「希望していた部署で働けることに喜んだこともありましたし、予想もしていなかった配属に驚いたこともありました。しかし、私自身は、これからも“予想のつかないこと”に挑戦できたらいいなと思っています」と語る。
年間450 本もの映画を劇場で観るほどの映画青年であった村本氏は、1987年、サッポロビールに入社する。
「学生時代は8ミリ映画も撮っていましたから、卒業後は表現して人々に訴えかけられるような仕事ができればと思っていました。ですが“一生の仕事”について真剣に考えた時、何かを表現することより、自分の好きなものを自分のところで造って、自信を持って人々に提供するということのほうが、手応えがあるのではないかと思ったのです」。その、人々に勧めたい大好きなものが、ビールだった。
「少々生意気でしたが、業界トップにチャレンジできる会社にと思い、サッポロビールへの就職活動を始めました。その時にお会いした方々が非常に素晴らしい方々だったのです」
具体的な話を聞くにつけてユニークな商品展開もさることながら、大きな事業展開にも感激した。
「当時はまだ恵比寿にビール工場がありましたが、すでに恵比寿ガーデンプレイスの構想が決まっており、ビール会社なのに都市開発事業も手がけるなど、大きく変わろうとしているダイナミズムを感じました」。この会社に入社できれば、いろいろなことが体験できると村本氏は感じた。
想いが通じて入社し、最初に配属されたのは東京支社営業企画部だった。
「もともと商品開発や宣伝といったクリエイティブな仕事に興味があったのですが、営業企画というのは『何をする部署なのだろう』と思いました。けれども、開発で活躍していた人から、いずれ開発や宣伝で活躍するには、支社の営業部門で仕事の流れを学ぶことはとても勉強になるはずだと言われていましたから、不満はありませんでした」と、村本氏は述懐する。その人とは、就職活動の時に出会った人だった。
「この時の仕事は、実際には商品コンセプトに合わせて本社が決定した販促企画を踏まえて、これを現場に合った形にアレンジして、実行できるようにするというものでした」
社会人1年めの村本氏にとって、出会った仕事は楽しいものだった。
「営業マンと一緒に酒販店や飲食店に出向き、ご意見を伺ったりすることもありました。非常に忙しかったのですが、こんな面白い仕事があるのか、という感じでしたね」