大切なのは自身の納得感 リーダーの熱意こそチームの原動力 鴫谷 あゆみ氏 東京ガスiネット 取締役会長
東京ガスグループのIT部門である東京ガスiネットで社長を務め、現在は会長としてリーダーシップを発揮する鴫谷あゆみ氏。
リーダーとして多くの実績を積み上げてきた同氏は、どのようにしてチームを率いてきたのか、 リーダーとしての考え方を伺った。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=中島弘人
新しいことを提案できるマインドが必要
―― 東京ガスiネットはグループ内でどのような位置づけの会社でしょうか。
鴫谷あゆみ氏(以下、敬称略)
1987年、経営の多角化を目的にITの外販をする子会社として設立されました。その後、事業でデジタルの重要性が増していくなかで、グループのIT部門へとシフト。東京ガスの情報システム部が戦略を立て、東京ガスiネットが実働部隊として動くという関係で続いてきました。
ただ、その体制のもとで、実働していないと戦略を立てられないという東京ガス側の問題や、上で決まったことをやるだけではモチベーションが上がらないというiネット側の問題が浮上。グループがホールディングス型グループ体制に方向転換したことを機に、24年4月から正式にグループのIT部門という位置づけでITの戦略から実働までを担うことになりました。
―― グループのITを上流から手掛けることになり、貴社自身の戦略も変化したのでしょうか。
鴫谷
「エネルギー・ソリューション」「ネットワーク」「海外」「都市ビジネス」、また、「エネルギー・ソリューション」は「都市ガス」「LNG販売」「トレーディング」「電力」「エンジニアリングソリューション」に分解されます。
ガス事業中心でやっていたころは、すべてのデータがガスメーターに紐づいていました。お客さまとガスメーターが一対一なので、ガスメーターを見ればお客さまが見えたのです。しかし、電気やその他ソリューションなど様々な事業が加わっていくと、ITのデータ構造をお客さま中心に抜本的に再構築する必要があります。
それに合わせて我が社の役割も変化しています。以前は事業部側が求めるITをそれぞれに提供していればよかったのですが、現在は事業部門に横串を通してグループのITを支えることを目指しています。
―― 方向転換によって求める人材はどのように変わりましたか。
鴫谷
過去に我が社に求められていたのは、事業部側に言われたことをきちんとやり遂げること、出来上がったシステムを安定的に運用することでした。決まったことをきちんとやるマインドセットは、社会のインフラを担う企業として欠かせないものであり、これまでは会社もそれを推奨し、社員が自分で理想の姿を考えて提案していくことをむしろ抑え込んでいる面がありました。
もちろんシステムの安定運用は引き続き重要であり、業務を標準化・マニュアル化して誰でもうまく運用できる体制は維持していかなければなりません。ただ、今後はそれを何のためにやるのか、何か新しいやり方はないのかといったことを自分たちで考えることが求められます。グループを俯瞰して、事業部が考えていなかった隣の事業部との接点を考えつつ、あるべき姿を提案していく。そうした社員が必要です。