連載 サービス品質・業務品質向上のための教育④[最終回] 業務品質向上のために必要な教育とは
業務品質向上という考え方は全社一丸一体となって取り組むべき経営の思想そのものであり、重要な経営課題である。
連載の最終回である第4回では、企業の教育部門はいかにして業務品質向上に取り組むべきかを考えCS向上や業務品質の課題解決のあり方を総仕上げする。
1. 業務品質向上を要請された教育部門の問題意識
先日、ある企業の教育部門責任者の方とお話しする機会があったが、そこで伺った教育の現状や問題意識は、かなり各社に共通する示唆に富んだ内容だった。
【経緯と現状】
従来の経営理念やビジョンを見直し、よりお客様を中心に据えた理念とビジョンを構築した。理念やビジョンに沿って、お客様満足度を向上させるために全社の業務、とくにお客様接点業務の品質向上を進めている。
教育部門としてもその浸透のために教育内容を見直していかなければならない状況にある。そのため、階層別教育のそれぞれのプログラムに、理念やビジョンを説明するパートを入れた。
一方、お客様からのクレームが増えていたため、営業統括部門と共同で部署の責任者向けにクレームに関する研修を行ってきたが、実際のクレームは減っておらず、トップからなぜ減らないのか、早急に改善するようにとの指示が出ている。
このような状況の中で、営業統括部門など関連部署と共同で教育内容の見直しの検討をはじめたが、それぞれの部署の思いがあるためなかなか前に進まない。
【問題意識】
クレームに関する研修の受講者アンケート結果は満足度が高い。その他の教育もアンケートをとり、プログラムの改善を行ってきていた。しかし、クレーム問題のクローズアップにより、研修は良いが成果につながっていないという問題が突きつけられた。
これまでの取り組みを冷静に振り返ると、研修メニューの改廃、個別の研修プログラムの見直しなど、結局は教育部門でできる範囲を限定し、その範囲でしか取り組んで来なかった。そもそもそうなったのは、教育部門の評価を「研修」満足度ばかり気にして、その改善だけに目が行きすぎたことが原因だと思っている。
「職場で実践」は、常に研修の中心に据えていたのだが、あくまで受講者が実践に役立つと思うかというアンケート結果で見ていた。それだけでは足りないということはわかったが、教育部門としてどのような取り組みをすべきなのかを検討しないといけない。これは教育部門の役割変革をどのようにしていくべきかという問題でもある。
また、現場の第一線担当者が企業の顔としてお客様対応を行うことを考えると、従来の階層別教育に軸足を置いた教育体系そのものの見直しも必要だし、教育体系のもととなっている求められる人材像や必要な能力、評価制度など人事制度も関連してくる。さらに、現状の部門業績評価の仕組みや年度の部門計画の立て方なども変えなくてはいけない。
目の前の教育内容をどうより良くしていくかという課題と、その前提となる部門の役割、さらには関連する全社の諸制度の改革という課題の、両面から進めないといけないというのが問題認識である。