第34回 自由になるにはルールが必要 ゲーム感覚で固定観念を超えていく 米光一成氏 ゲーム作家・ライター
『ぷよぷよ』に始まり、最近ではシリーズ累計100万部を突破した『はぁって言うゲーム』の生みの親として知られる米光一成さん。
ヒットメーカーの発想の源泉、「私らしさ」とは。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=山下裕之
「寂しい」から生まれた大ヒット
―― 『はぁって言うゲーム』はリアルで集まって遊ぶアナログゲームです。初めてタイトルを耳にしたときは、まさに「はぁ?」と思いました(笑)。
米光一成氏(以下、敬称略)
そうそう、それですよ。いま言った「はぁ」は何の「はぁ」か? 「はぁって言うゲーム」は与えられたお題の台詞を、声と表情だけで演じて当てっこするゲームです。お題が「はぁ」なら、各プレーヤーに「驚きの『はぁ』」や「感心の『はぁ』」などのシチュエ―ションが割り当てられ、互いに何の「はぁ」を演じているかを当て合うわけ。シンプルだけど、演技と推理の勝負で、盛り上がります。お題は「はぁ」の他に、「好き」「うそ」「えー」といった一言から、かけ声や挨拶、顔芸まで、様々なバリエーションがあります。
―― アイデアが生まれたきっかけを教えてください。
米光
池袋のカルチャーセンターで「ゲームづくり道場」という講座の講師をやっていて、授業が終って飲みに行く途中で、みんなワイワイ話してるのに、なぜか僕だけがぽつんと独りになる瞬間があって。無性に、寂しい!と思ったんですよ。みんなにかまってほしい、何なら「好き」って言われたい(笑)。じゃあ、「好き」って言われるゲームをつくればいいんじゃないか―― それが、最初の思いつきです。紙切れに「お題」を書いて、実際に飲み会でやってみたら、結構盛り上がって。これはゲームとしていけるなと手応えを感じました。
―― 実際、アナログゲームとしては異例の大ヒットを記録しています。デジタル全盛時代でも選ばれるアナログゲームの魅力とは?
米光
誰もが平等に、同じルールの下でやり取りできる。そういう場をリアルで楽しめることに、僕は一番魅力を感じます。たとえば、初対面のビミョーな空気の集まりでも、打ち解けるのに最適なんですよ。全員でルールを共有し、ある種限定された枠のなかでプレイすると、自由に振る舞うよりも逆に個性が発揮されますからね。「この人、こういうふうにやるんだ」と、お互いにスムーズに知り合えるし、知り合うこと自体が楽しいじゃないですか。
まともな会社へ行くのはマズい!?
―― ボードゲームやカードゲームは企業研修でもよく使われますね。
米光
場をほぐすとか、仲良くなるとか、アイスブレークに活用できるだけでなく、チームワークみたいなところも期待できるからでしょう。実はボードゲームの潮流として、最近は「協力ゲーム」とよぶ種類のものが増えてきているんですよ。古典的なゲームと違って、プレーヤー同士で競争したり、戦ったりしない。それぞれが個性を発揮し、協力して何かを達成するのが「協力ゲーム」たるゆえんです。まさにチームワークの育成なんかにもってこいですよね。ゲームの世界にもそんな新しい波が来ています。