第33回 究極の戦略は“人” すべての経験から学び新会社の人事改革をリードする 今井のり氏 レゾナック・ホールディングス 執行役員 最高人事責任者(CHRO)
2023年、昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合して誕生したレゾナック。
統合プロジェクトで日立化成側のリーダーを務め、最高人事責任者(CHRO)となった今井のり氏に、キャリアの変遷や人事への想いを聞いた。
[取材]=編集部 [文]=谷口梨花 [写真]=山下裕之
同期唯一の女性総合職として入社
昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)の統合で誕生したレゾナック。同社は統合に伴い人事の在り方を抜本的に見直した。リーダーシップ教育や文化の醸成、タレントマネジメントにシフトさせるために人事本部長ではなくCHROを置いたこともそのひとつだ。そのCHROに就任したのが、旧日立化成でキャリアを積んだ今井のり氏である。
「大学時代は理系で、有機合成の研究を行っていました。私、当時はあまり明確なキャリア志向がなかったんです。卒業後は心理学をやってみたくて大学院に入り直そうかとも考えていました。唯一、教授の推薦で受けたのが日立化成。当時の人事部長に『女性は総合職採用しません』と言われたのを覚えています」
結果的に、同期で唯一の女性総合職として採用された今井氏。最初に配属されたのは社長室の経営企画部門だった。通常、新入社員が配属されるような部署ではなかったが入社後すぐに米国のベンチャー企業からの技術導入の交渉サポートを担当。これが仕事の原体験となったと振り返る。
「ここで3つのことを学びました。1つめは、シリコンバレーの文化です。博士課程の学生と大手企業の役員や出資者が対等に議論し合い、立場に関係なくイノベーションを追求する、緊張感とスピードを経験できました。2つめは、仕事は自分で取りにいかなければいけないということ。アライアンスのサポートでは様々な事業部と関わります。どんな雑用も進んでやり、自分から動いて信頼を得ようと思っていました。3つめは、今まで見たこともない世界を見たいという気持ちが高まったことです。学生時代にバックパック旅行をしていたこともあり、もともと志向はあったのですが、より高まりましたね」