Vol.8 言葉を磨き、問い掛け、語り合う伝わる・共有できる理念デザイン ─ ユーザベース ─ 松井 しのぶ氏 ユーザベース 執行役員CHRO|佐宗邦威氏 戦略デザインファーム BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer
人的資本経営の重要性が増しているいま、新たな組織の形が求められている。
人事はどのように、価値を生み出す人・組織をつくるべきか。
第8回のゲストは、ユーザベース。
急成長を遂げる同社では、理念を共有し、一人ひとりの軸とするため、問い掛け、言語化することにこだわっている。
佐宗邦威氏とともに、「人的資本経営」を実現する組織と個人の在り方を探る。
[取材・文]=西川敦子 [写真]=中山博敬
ユーザベースらしさをとことん伝える
佐宗
ビジョン、バリュー、ミッション、パーパスなど企業理念をいかにデザインするかは、人的資本経営の最大のテーマです。ユーザベースさんでは、共通の価値観をまとめた「The 7 Values」、バリューをブレークダウンした「31の約束」、人事システムの考え方が理解できる「Uzabase HR Handbook」など魅力的なツールで理念を発信されていますね。まず「The 7 Values」ですが、どんなタイミングで策定されたのですか。
松井
「The 7 Values」を作ったのは2012年です。創業が2008年ですから、ちょうどメンバーの数が50人ぐらいになったころでしょうか。
佐宗
組織としての存在意義を言語化する必要が出てきたのが、そのころだったわけですね。創業期の企業は、プロダクトを作ることに集中しますが、企業規模が大きくなってくると、「自分たちはどういう存在なのか?」「何を実現する組織なのか?」といった問いにぶつかります。
松井
私はまだ入社していなかったので伝聞ですが、おっしゃるとおりで、最初は創業メンバーがワイワイガヤガヤと仕事をしていたのですが、チームが分かれると、それぞれ自チームの景色が生まれ、しだいに意見の対立が生じてきました。そこで、ユーザベースとして大事にする軸を決めようということになったのです。
佐宗
事業がある程度回り出し、メンバーが増えてくると、それだけ価値観も多様化します。歓迎すべきことではありますが、組織としての方向性を明示しなければ衝突が増えてしまいます。「The 7 Values」(図1)はどういうプロセスで開発したのでしょう。
松井
会社として在りたい姿を掲げたというよりは、すでに持っていたユーザベースらしさ、価値観をすくい上げていった感じですね。ありふれた言葉、一般的な言葉では心に残らないので、印象的で、かつ自分たちらしい言葉で語ることを心掛けました。意識したのは「短い」「覚えられる」「刺さる」の3つです。
佐宗
コピーライティングが非常にすっきりまとまっているな、と感心しました。もともとは「7つのルール」という名称だったそうですね。