企業事例1 古田土公認会計士・税理士事務所 挨拶、朝礼、掃除の文化がつくる“日本一元気”な会計事務所
全国各地から企業が見学に訪れる会計士・税理士事務所がある。訪問者たちのお目当ては、都内に拠点を構える古田土公認会計士・税理士事務所が毎日行っている朝礼だ。同社では、30分はかかる朝礼、駅前の掃除、全員と一人ずつ挨拶を「3つの文化」として掲げることで、社員が生き生きと働き、創業以来30年間連続増収を実現している企業として知られている。3つの文化を徹底する理由、そして社員に浸透する理由などを紹介する。
毎朝、全員が全員と握手をして挨拶する
社員: 「古田土所長おはようございます!」
所長:「 ○○さん、今日も1日笑顔で頑張りましょう。よろしくお願いします!!」
古田土公認会計士・税理士事務所の1日は、社員一人ひとりと所長との元気な挨拶と笑顔でスタートする。挨拶は、大きくはっきりとした声で、おじぎと挨拶はしっかりと分ける「分離礼」が鉄則。少しでも手を抜くと、所長から注意を受ける。
朝の挨拶の流れは、まず、入り口付近に設置してある大きな鏡で身だしなみをチェック。そして床に描かれている足型の上に両足をきちんとそろえて、大きな声で社内全体に向かって挨拶する。そして所長と社員ががっちりと手を握り合いながら冒頭のような元気な挨拶を交わす。さらには社員同士も、全社員一人ひとりと握手を交わしながら挨拶をするというものだ(写真)。
全員と挨拶を交わすまでにかかる時間は、10 分近くにも及ぶ。
同社は、東京・江戸川区に拠点を構える社員数130名ほどの公認会計士・税理士事務所。「日本中の中小企業を元気にする」を経営理念に掲げている。所長である古田土満氏を筆頭にビジョンの実現をめざして、日々、実践を積み重ねている企業だ。古田土所長は、「理念は掲げるだけでなく、きちんと実践することが大事」と語る。そして、他の人を元気にするためには、まず、自分が元気になることが大事だと考え、「挨拶」「朝礼」「掃除」の3つを理念実現のためにこだわっている。
なぜ、この3つなのか。所長の古田土満氏は次のように話す。「挨拶、朝礼、掃除の3つを大切にしているのは、全て社員が全員揃いやすい朝に実施できるものだからです。朝は1日で一番大切な時間帯。
それに、これらは習慣化できるものばかり。よく、『意識が変われば行動が変わる、行動が変われば、習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる~中略~運命が変われば人生が変わる』といわれます。正しい挨拶や、笑顔は、日頃の訓練次第で身につくものです。トレーニングすることによって習慣として身につき、人間性が高まるという考えです」
社内での朝の挨拶だけでも、かなりの時間を要する同社。徹底した挨拶は、来客者に対しても行われる。
来客があれば、全員すぐさま作業の手を止めて起立。客人のほうに体を向けて、爽やかな笑顔で挨拶をする。多くの来客が訪れるが多忙な時でも都度社員が手を止めて挨拶する。
そうした社員の姿を見た客人から、「非効率ではないのでしょうか」と尋ねられることもあるという。だが、他社からの心配をよそに、同社は創業30年間連続の増収。新規顧客数は毎年クチコミだけで150 ~ 200 件増加。経常利益率は20%という驚異的な生産性を上げている。「一見非効率なことばかりやっている会社のように見えるかもしれませんが、数字を見れば決してムダなことばかりではないのは明らかです。
私は、社員が一生幸せに働くことができる会社をつくりたいという一心で組織づくりを行ってきました。利益を上げることだけを考えては、従業員のモチベーションアップにはつながりませんし、幸せな会社にはなりません。社員のモチベーションがアップすれば、数字は自ずとついてくる。そう考えて、経営者として社員の満足度、モチベーションを上げることを第一にしてきました」