第14回 働き方の多様化による組織内の不公平感 平山 鋼之介氏 Sansan株式会社 人事本部 Employee Success部 部長|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
一筋縄では解決できない人事・人材育成のお悩み。
今日もまた、中原淳先生のもとに、現場の「困った!」が届きました。
今回のテーマは「働き方の多様化による組織内の不公平感」。
前回に引き続き、ゲストにSansan人事本部 Employee Success 部部長の平山鋼之介氏をお迎えし、リアルな現場のお悩みに答えていきます。
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=Sansan提供
なにもかも同じにするのが公平なことなのか?
中原
テレワークできる人とできない人の間に広がる不公平感をどう考えるか。御社ではいかがですか?
平山
弊社でもテレワークを導入していて、やはり職種によって勤務体系を変えています。ビジネス職は週3日以上出社とし、エンジニア職とクリエーター職は週3日出社、または週1日出社のどちらかを選べるようになっています。職種によって勤務体系を変えたのは、パフォーマンスについての調査を通して、エンジニアやクリエーターなどの専門職の方はテレワークでもほとんどパフォーマンスが下がらない一方、営業や事務などいわゆるビジネス系の職種の方はパフォーマンスが下がる傾向にあることがわかったからです。
中原
質問者の方の企業と同様、職種によって勤務体系を変えているわけですが、公平感についてはどのようにお考えでしょうか。
平山
この3年間ずっと悩み続けてきたテーマです。今、どう整理しているかというと、「公平感にも違いがある」ということです。
中原
公平についての考え方は一様ではない、というわけですね。
平山
はい。この3年間のテレワークの経験で、出社することのポジティブな側面・ネガティブな側面それぞれが見えてきました。ネガティブな側面は、どちらかというとライフの部分です。通勤時間が無駄だとか、家族との時間、趣味や勉強の時間が取れない、といったことです。一方で、いろんな人と情報交換ができるとか、上司や同僚に相談がしやすいとか、共に働く同僚との仲間意識、帰属感が得られる、など、出社することによるポジティブな側面もあります。
中原
営業職や事務職の方のパフォーマンスが高まるのは、出社することに、なんらかのメリットがあるからなんでしょうね。
平山
そのとおりです。人事は、社内の不公平感や採用を気にしてテレワーク勤務を増やした方がいいと思いがちです。実際弊社でも、社員から多くの要望が寄せられています。ですが、社長と議論をしていたとき、「みんなQOL(Quality of life)ばかり気にしているけれど、会社としてはQOW(Quality of work)を考えないとダメだよ」と言われ、はっとしました。実はQOWを求めているのは社員も同じで、社員も「この会社でいかに良い仕事をして会社の成長と共に自分も成長するか」ということを求めています。それなのに、QOLばかりを見ていたら、QOWを高めることはできません。それでは会社にとっても、本人のキャリアにとっても、プラスにならないのです。人事としてはその視点を絶対に忘れてはいけない、ということはこのとき確信しました。