COLUMN2 覆面座談会 現役研修講師が語る、コロナ禍入社組の実態
コロナ禍によって研修もオンライン中心へと大きく形を変えた。
企業の研修ニーズや受講者たちの様子にどのような変化が見られるのか。
現役研修講師の3名にその実態を聞いた。
[取材]=編集部 [文]=菊池壯太
企業からの要望は「厳しく」から「寄り添って」
―― コロナ禍前後で新入社員研修に対する企業からの要望にどのような変化がありましたか。
岡田(以下敬称略)
新入社員や入社3年目くらいまでに対しては、「厳しく」よりも「寄り添って」ほしいと最近よく言われます。
丸山
コロナ前までは「弛まないように厳しめにファシリテートしてほしい」という要望が多かったのですが、そういう要望はほとんどなくなりましたね。また、対面が復活し始めたことで、「研修は同期が集まる特別な機会だから、絆を形成する場として活用したい」というニーズも強くなったと感じています。
岡田
実際に受講者による研修後のアンケートでも「同期の人たちと一緒に話せて幸せでした」といったことを書く人が多いですね。空間を共にし、会話して、同じアウトプットを仕上げてといった共同作業が絆を生んでいるのだと思います。
―― 「寄り添う」というキーワードが聞かれ始めたのはコロナ禍直後からでしょうか。
岡田
そうです。新入社員をいわば腫れ物に触るような見方をし始めたのかなと。オンライン中心になって彼らのことを把握できない。だから、厳しく接することもできない、というふうに。
丸山
研修に遅刻をしたり、居眠りをしたりしていても、人事の方が注意しないこともありました(笑)。
佐藤
「腫れ物に触る」という表現はまさにそのとおり。言い方を換えると「お客様扱い」ですね。人事の方と研修を受ける社員との距離感が以前と変わったなと思います。本来であれば、就活を通じて人事担当者と新入社員はかなりの信頼関係が築かれているものです。ところがコロナ禍で就活から入社式、導入研修までオンラインで、懇親会などもできないとなると、お互いの人となりがよくわからないまま距離が開いてしまう。だから、注意すらできなくなっているんだと思います。
岡田
確かに、「今年の新入社員の特徴は?」と尋ねても「あまり知らないんです」とか言われます。
丸山
「寄り添ってほしい」というニーズは、言い換えれば、受講者に自分たちの代わりにフィードバックしてほしいという意味なのかもしれません。加えて若い受講者からは、研修を通してしっかり自分を見てほしい、そのうえで踏み込んだフィードバックがほしいといった思いも強く感じます。
職場からフィードバックを得る機会が減少
―― なぜフィードバックを求めるのでしょうか?
岡田
彼らはとにかく自信なさげなんです。「これでいいのだろうか?」と悩んでいるうちに3年目になってしまった、みたいな。職場でしっかりしたフィードバックをもらえていないのでしょう。だから研修でのフィードバックがとても身に染みるのでしょうね。実際、研修で受講者同士が相互にフィードバックし合う場面でも、輝くような笑顔を見せますよ。そういうのを見ると、やはり普段はフィードバックがもらえていないんだろうなと感じます。