Vol.7 特別編 佐宗邦威氏・田中 弦氏と考える「人的資本経営がつくる創造する組織」─セミナーレポート(後編)─ 田中 弦氏 Unipos 代表取締役社長 CEO|佐宗邦威氏 戦略デザインファーム BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer
人的資本経営の重要性が増しているいま、新たな組織の形が求められている。
人事はどのように、価値を生み出す人・組織をつくるべきか。
前号に引き続き、2023年5月に開催されたオンラインセミナーのレポートをお届け。
統合報告書の読み解きと分析を行うUnipos 代表取締役社長 CEOの田中弦氏と佐宗邦威氏が、セミナー参加者からの質問についてディスカッションを行った。
[取材・文]=菊池壯太 [写真]=佐宗邦威氏、田中弦氏提供
(ファシリテーター:斎木輝之 日本能率協会マネジメントセンター ラーニングマーケティング本部 本部長)
開示をストーリーテリングとして捉える
斎木
人的資本開示の独自指標づくりは、今後注目されるポイントだと思います。売り上げ・利益をKPIにしている企業が、パーパスや組織文化、そして人的資本といった定性項目についてどういった指標を選ぶのかについては、独自の意思が込められると思います。
お二人は、独自の指標をどう設定し開示につなげるのがもっとも良い形だとお考えでしょうか。
田中
人的資本開示についてお客様をサポートする際に私は、「御社のすべらない話は?」と質問します。「すべらない話」とは、どこでも通じる鉄板トークのことです。どこの会社にも、自慢できることや、開示において投資家からいろいろ聞かれたときに、それを逆手にとって「実はすごく改善しています」と言えるような話ってあると思いますし、それらは聞いていて面白いものです。
一方、アピールトークは鉄板トークとは違って、裏側のことは隠していいところだけ話すので、面白くない。つまり、本質的な鉄板トークをどうつくるかが人的資本開示のヒントになると考えています。
佐宗
いまの話は、ストーリーテリングですよね。綺麗ごとばかりでは、記憶にも印象にも残りませんが、田中さんが講演のなかで紹介されていたアサヒグループホールディングスさんのように(図)、あえて突っ込まれそうな課題について先手を打って開示して注意を引きつけたうえで、「でも改善していきます」といったメッセージを発するのも、1つの方法です。人的資本情報開示もストーリーテリング的に捉えると面白いかもしれません。
田中
開示が投資家やステークホルダー、社内外とのコミュニケーションだとすると、良いコミュニケーションのための良いストーリーは必要だと思いますね。