第13回 コミュニケーションにおけるAIの活用 平山 鋼之介氏 Sansan 人事本部 Employee Success部 部長|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
一筋縄では解決できない人事・人材育成のお悩み。
今日もまた、中原淳先生のもとに、現場の「困った!」が届きました。
今回のテーマは「コミュニケーションにおけるAI の活用」。
ゲストにSansan人事本部 Employee Success部 部長の平山鋼之介氏をお迎えし、リアルな現場のお悩みに答えていきます。
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=Sansan提供
出社かテレワークか二者択一ではない
中原
テレワーク問題に頭を悩ませるマネジャーの方からのご相談です。現在、働き方について検討している会社は多いと思いますが、平山さんはどうお考えですか?
平山
テレワークと生産性の関係については、各社で様々な調査が行われていて、会社によっても職種によっても異なり、一概に述べるのは難しいように思います。当社では「出社時に比べてテレワークでのパフォーマンスは何%ですか?」という調査を毎月行っています。そこで明らかになってきたのが、営業や事務などいわゆるビジネス系の職種の方はパフォーマンスが下がってしまうということです。
一方で、エンジニアやクリエイターなどの専門職の方はテレワークでもほとんどパフォーマンスが下がらないのです。そこで、職種によって勤務体系を変えました。ビジネス職は週3日以上出社、エンジニア職やクリエイター職の方は週1日出社または週3日出社のどちらかを選べるようにしています。週1日を選ぶとデスクがなくなり、フリーアドレス席に、週3日の人には固定席が残るという制度です。
中原
ビジネス職の方が出社が多いということなのですね。
平山
はい。理論上60%出社ということになりますが、データを見るとそれ以上出社している人が多いようです。出社してみると、先輩後輩や同僚、同期とのコミュニケーションができて楽しいし、効率もよく、つらい時も励まし合えるなど、出社のメリットを感じるようです。
中原
おっしゃる通り、出社かテレワークかの問題は十把一絡げにはできません。専門職であるかそうでないか、対人折衝がどの程度あるのかなどにより生産性は大きく変わります。
世界的には、テレワークでの生産性は出社時の8割になる、つまり2割下がってしまうと言われています。しかし生産性は少し下がっても、テレワークを認めることによってエンゲージメントが上がる、ということもあります。エンゲージメントや働きやすさ、そして採用面を考えると、テレワークは一切なし、というわけにはいかず、結果的に週3~4日出社、というパターンが多いのではないでしょうか。やはりテレワークできない会社は、今の学生たちからは敬遠されそうな気がします。採用面ではいかがですか?
平山
難しいところです。完全出社でテレワーク一切なしでは、採用競争力が落ちるということは確かにある一方で、大学時代、サークル活動もアルバイトも旅行も制限されていたので絶対に出社がある会社がいい、といった話や、以前の会社がフルオンラインで、毎日誰とも会わずに家で仕事をしていたら精神的に辛くなり出社のある会社への転職を決めた、といった話も聞きます。
中原
なるほど。逆に、テレワーク向きとされるエンジニア職であっても、フルオンラインよりは1日でも出社がある方がいい、ということもあるのかもしれませんね。