OPINION 3 アジャイル(俊敏)な人事をめざせ! 「人と制度」のマネジメントから「成果」のマネジメントへの転換
「人材のグローバル化」と言われて久しいが、グローバル化を面のひろがりと捉えた時に、辺境の地はあまり残されていない。
今後は、「人材を海外へ送り込む」だけではなく、「人材の質を高めて成果を出す」ことがグローバルタレントマネジメントの主眼となってくるのではないだろうか。
グローバルにおける人材マネジメントをさらに磨き上げるポイントについて、多くの国内外企業のグローバルリーダー育成にかかわる戦略コンサルタントが語る。
「VUCA」な世界における人事
今年5月に開催されたATD(旧ASTD)2014国際会議でよく聞かれたキーワードに「VUCA」というものがある。Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字をとったものだ。人事としても、こうしたVUCAな世界での変化を捉えて未来を創り出していくことの重要性が高まっているとのことであった。成功を続けてきた企業や優秀な人ほど変わることが難しい。成功のジレンマにとらわれず、いかに俊敏に変化へ対応できるか、これが今人事に問われていることだ。ではこうした時代におけるグローバルタレントマネジメントはどうあるべきか、まずはこれまでの取り組みから振り返ってみたい。
日本企業ではまず「グローバルでの人材の可視化」を狙いとしたグローバル人材データベースの導入が進んだ。並行して、管理職層以上を対象としたグローバル共通の人事制度(等級・評価)も導入され、人材を共通の尺度で評価できるようになり、結果として、グローバル全体での経営幹部層の見極めと育成が進んだ。依然として進行形ではあるものの、こうした人材活用の枠組み、仕組み自体は整備されているというのが現状ではないだろうか。しかし、運用に目を向けるとまだ十分とはいえないようだ。人材データベースも活用が進まず、本来めざしたグローバルでの適所適材の実現には至っていない。つまり、グローバルタレントマネジメントによる事業成果の創出には至らず、足踏みしている企業が多いように感じている。イメージとしては、配線(制度・システム)は整ったが、そこにエネルギー(人材)が流れていないという状態だ。一因として、多くの企業では、制度や仕組みの「導入」自体が目的化してしまっている点があるかもしれない。
高まるアジャイル(俊敏さ)の重要性
次のステージではどのような状態をめざすべきだろうか。これまでに整えた制度や仕組みを着実に運用し、グローバルボーダレスで人材の供給を実現すること、そして、「人を動かして終わり」ではなく、人材がそれぞれのポジションで「パフォーマンスを発揮できる状態」をゴールとしたい。つまり、人や制度の管理ではなく、成果やパフォーマンスの創出結果に焦点を移すということである。成果創出への貢献をめざす時、前述の「VUCA」に象徴される、ビジネスの変化の速さや不確実性への構えがますます重要となる。人材を育てるのには時間がかかる。だからこそ、事業環境や市場の激しい変化に柔軟に対応できる、「アジャイル(俊敏)」なタレントマネジメントへの進化が求められる。