CASE 2 博報堂 打ち合わせで、役に立たない人なんていない チームで考え抜き、アイデアを生む 受け継がれる“打ち合わせ”の仕組み
「アイデアは、人ではなく会話に宿る」―。
新しい発想は誰かの「頭の中」ではなく、皆の「会話の中」から生まれるというのが、博報堂の考え方だ。
参加者全員で最高の結論を導き出す同社の打ち合わせスタイルは、
チームとして“考え抜く力”を発揮する場といえる。
そんな同社の打ち合わせの秘密に迫る。
●基本的な考え方 チームで考え抜く
■打ち合わせがアイデアを生む
「当社は、主にアイデア、コンセプトづくりを行う会社ですが、そのアイデアのほとんどは、打ち合わせから生まれます。天才的なひらめきを持つクリエイターが生み出していると思われがちですが、そうではありません。皆で考えたほうが視野が広がるし、コンスタントに結果を出すことができます」
そう語るのは、『博報堂のすごい打ち合わせ』を執筆したブランド・イノベーションデザイン局ディレクターの岡田庄生氏である(以下同)。
同社がクライアントに提案をする時、1人だけで提案内容を考えることはまずない。チームを組み、参加者全員が多数のアイデアを持ち寄り、皆で話し合う。そのうえで、持ち寄ったA案、B 案、C 案の中から1つを選ぶのではなく、新たなD案、E 案を導き出す。
一人ひとりが考え抜いてアイデアを持ち寄るわけだが、「自分が考えたものが最高の答えではない。それは会話のための準備。誰かのアイデアとぶつかることで、思いもしなかったものが生まれる」という共通認識がある。他者との会話の中から、自分が考えた以上のものが生み出される喜びを何度も経験しているので、自分の考えを無理に押し通そうとする人はいない。
■自社の打ち合わせを分析
このように、メンバー間の対話の中から、より優れた案を生み出そうとする同社だが、当然、時間には限りがあり、生産性も意識しなければならない。
そこで、同社でシステムや広告などの研究を行う研究開発局という部署の研究員が、自社の「打ち合わせ」に着目。打ち合わせが上手な社員を観察したり、その人たちが繰り出す質問を分析する社内プロジェクトを立ち上げた。その研究の結果、個々の社員が暗黙的にやってきたことに、多くの共通点があることが明らかになった。
●打ち合わせの仕組み 遠慮のない意見の出し合い
■徹底した拡散と収束
課題解決やアイデア出しを目的とした打ち合わせには、図1の4つのプロセスがあることが分かった。
ポイントは、「拡散」と「収束」の徹底ぶりだ。同社では、クライアントの商品を考える際に、メンバー全員が、1人50 ~ 100 個ものアイデアを持ち寄ることも珍しくない。5人いたら、250 ~500 個のアイデアが集まるわけだ。アイデアだけでなく、そのテーマに関する個人的なエピソードを持ち寄ることも多い。「うちの妻がこんな使い方をしていて……」といった体験談は、新たな発想を生むヒントになる。
「収束」というのは、多数のアイデアの中から面白いものを選び、深掘りしていくプロセス。その深掘りの仕方も徹底しており、浅い答えでは許されない。