第11回 中堅社員の伸び悩みと離職 田中 潤氏 Jストリーム 執行役員 管理本部 人事部長|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
一筋縄では解決ができない人事・人材育成のお悩み。
今日もまた、中原淳先生のもとに、現場の「困った!」が届きました。
今回のテーマは「中堅社員の伸び悩みと離職」。
ゲストにJストリーム執行役員管理本部人事部長 田中潤氏をお迎えし、リアルな現場のお悩みに答えていきます。
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=田中 潤氏提供
中堅は“順調”に伸び悩む
田中
この連載、毎回こんな難題をやっているんですね……。これは相当難易度が高いですよ(笑)。
中原
おっしゃるとおりです(笑)。が、めちゃあるあるです。どの会社でも起きている問題ですよね。このお悩みを聞いてどう思われましたか?
田中
中堅社員の伸び悩みと流出という2つの問題があり、どうやらこの2つはリンクしているようだ、ということですよね。一番気になったのは、「中途入社も多く、入社当初は意欲を持っていると思うのですが、だんだん目立たなくなってしまいます」というところ。中途入社した方々が、最初は意欲を見せていても、適応すると目立たなくなるというのは、残念ながら、“そういう会社”だということです。この会社では、挑戦意欲や向上心を持たない方がいい、と学習してしまっているのです。
中原
つまり「意欲を失う」ということを「学習」したということですね。なぜ、この学習が進んだのでしょう?
田中
これはもう、様々な理由が考えられます。そもそも挑戦することのハードルが高すぎる。いろんなしがらみがあって新しいことを始めにくい。思い切って提案したのに、あっさりとダメ出しをされてしまう。手を挙げてみたものの、孤立無援で放置される……などといったことが日常的に起きていて、挑戦することをあきらめてしまっているのかもしれません。
だとすれば、まずはそうした可能性を一つひとつ丁寧に潰していくしかないように思います。そもそも「挑戦していいことがあるのか?」というところですよね。挑戦しても特にメリットがないから、誰も挑戦する気にならないのではないでしょうか。中原さんはこのお悩みについてどう思われましたか?
中原
ある意味、“順調”に問題だらけ、という気がしますね(笑)。そもそも30代から40代というのは、多くの人が“順調に”伸び悩むものです。30代が近づけば「このまま、この会社にいてもいいのかな」とモヤモヤするものですし、40代になれば「このまま、私の仕事人生、終わっていくのかな」とモヤモヤすることは研究でわかっています。仕事を始めてから10年以上たっているわけですし、若いときのように急にスイッチが入って挑戦し始めたりすることは期待できません。人を突然やる気にする「栄養ドリンク」は存在しないのです。
田中
確かに。年代的なところは大きいですよね。