「挑戦するDNA」を体現する “覚悟”と人づくりへの想い 西川弘典氏 東急不動産ホールディングス 代表取締役社長
2022年、 東急ハンズ売却が大きな話題となった同社。その決断をはじめ、「GROUP VISION 2030」の実現に向けて力強くグループを率いるのは代表取締役社長の西川弘典氏だ。今後の展望と直接関わる次世代経営者育成について聞いた。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=松井一真
「WE ARE GREEN」に込めた想い
―― 現在のグループの重点課題を教えてください。
西川弘典氏(以下、敬称略)
2020年、社長に就任して最初のIR発表会で投資家の皆さんに宣言したことがあります。当社グループは約3万人の企業集団で、事業領域が広いことが特徴です。ただ、事業ウイングの広さが競争優位性になっていなかった。これを真の強みに変えることが私の仕事であり、そのために事業ポートフォリオの再構築を進めるとお話ししたのです。
各事業は定量評価と定性評価の2軸で評価します。目安の1つは、同業と比較したときに上位のポジションにないもの。また、グループのバリューチェーンを活かしていけるかどうかという視点も必要です。どちらも満たしていないものについては聖域なく見直します。
22年は、子会社の東急ハンズ(現ハンズ)をカインズさんに譲渡しました。当社グループでは成長させきれませんでしたが、カインズさんは我々にない経営資源をお持ちで、前向きな譲渡になりました。まだ道半ばですが、今後も事業ポートフォリオの再構築を進めていきます。
―― グループとしての強みを発揮するには、各社で方向性を合わせることも重要です。
西川
そう考えて、21年5月に長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を発表しました。当社グループはBtoC事業の割合が高く、コロナ禍の影響を大きく受けました。ちょうど中計が切り替わるタイミングでしたが、どこまで業績が落ちるのか見通せず、数量計画を策定することは難しい。そこでアフターコロナも見据えて、2030年に目指す姿を示しました。
―― スローガンは「WE ARE GREEN」。これにはどのような想いが込められているのでしょうか。
西川
2030年を考えたときに外せない動きが2つあります。1つは環境に対する意識の高まりです。環境貢献度の低い企業や商品、サービスは、今以上に受け入れられなくなるでしょう。グループが一丸となって在りたい姿を目指す意味合いを込めて「WE ARE GREEN」を掲げました。
もう1つの大きな動きはDXです。以前からデジタル化の流れはありましたが、コロナ禍でますます加速して、私たちの仕事の在り方も変化しています。環境経営と合わせて、やはり強く意識する必要があります
―― スローガンの浸透度はいかがですか。
西川
「WE ARE GREEN」にした理由は可能な限り直接話しています。シールを作って配るなどしているのですが、PCやスマホに貼っている社員も多い。スローガンの認知度は高いと思います。