CASE2 オムロン|求めるのは理念を実践するコンピテンシー グローバルリーダーを輩出し続ける人財戦略 稲並幸生氏 オムロン グローバル人財総務本部 グローバル人財戦略部 担当部長 タレントマネジメント課長 兼 組織開発課長 他
大手電気機器メーカーのオムロンは、
2011年よりグローバルの主要ポジション候補となる人財をプールし、
質の高い人財を途切れることなく輩出する仕組みを運用している。その概要とは。
グローバルビジネスリーダーには何を求め、どんな育成を行っているのか、話を聞いた。
[取材・文]=竹内美香 [写真]=オムロン提供
長期戦略でリーダー育成を重視
「Shaping the Future2030」―― ヘルスケア製品でおなじみの大手電気機器メーカー・オムロンは、10年後を見据え、新たな長期戦略に舵を切った。今期からスタートした戦略下では、従来以上に“人財”に焦点を当てるという。グローバル人財戦略部タレントマネジメント課の稲並幸生氏はこう話す。
「長期戦略では『人が活きるオートメーションで、ソーシャルニーズを創出し続ける』というビジョンを掲げています。これまでは機械が人の仕事を代替していくと考えられていましたが、これからは機械と人が協調、融和する時代になるはずです。そこで人を活かすため、我々は人の能力を最大限発揮することを目指し、いっそう、人財戦略を重視していきます」
同社では、人財戦略を検討するうえで次の2つを柱としている。人の能力開発への投資や戦略実行の上で必要な人財の獲得など、数字で表すことが可能な財務価値と、一人ひとりが主体性を持って多様な個性や能力を発揮し続けるためのダイバーシティ&インクルージョンといった、サステナビリティな価値を表す非財務価値である。双方を高めることを前提とした人財戦略のなかで、同社が優先度高く進めているのがグローバルリーダーの早期選抜・育成を行う「グローバルコアポジション・コア人財戦略」だ。
「グローバルビジネスリーダーの不足という喫緊の課題に基づき、2011年から取り組んでいる戦略です。オムロンの長期的な成長を支えるため、グローバルで重要なポジションに最適な人財を輩出し続けることを目的に、長期戦略のもとで特に力を入れて進めています」
また、「海外にある重要ポジションへの現地人の登用」についても、最重要課題として取り組んできた。意思決定のスピードを高めることができ、加えて、現地社員の将来のキャリア展望が広がり、動機づけにつながるからだ。
企業理念実践をベースにしたコンピテンシー
具体的には、グローバルでもっとも重要とされる約200のポジションをグローバルコアポジションと認定し、それぞれのポジションに対してサクセッションプランを作成。後継者候補人財(サクセッサー)を育成していく。後継者候補となる人財プールは3つの層に分かれており、コアポジションに0~3年の育成で就任できるサクセッサー、4~5年の育成で就任できるサクセッサー、6~10年後にコアポジションを担う可能性がある若手優秀人財(Future Gem)としている(図1)。
「コアポジションに就くまでに必要な経験やトレーニングは各層により異なるため、確実かつ効果的に後継者を育成するために、あえて細分化した管理をしています。人財のプールはポジションに対して2倍の人数を目標にしています」
2011年当初、開始にあたり苦労したのは、グローバルコアポジションの定義と選択だった。初期は戦略的に重要なポジションを各ビジネスカンパニーごとに選択し、徐々に共通の職務評価による定義を構築・定着させていった。同時に、コアポジションの新設や人事異動などの決裁権は、グループCEOに集約した。