CASE1 NTT|多様な人材の育成を支援 新たな経営スタイルへの変革を支えるNTT University 須藤博史氏 日本電信電話 総務部門 人事・人材開発担当部長 他
予見しがたい社会経済情勢の変化やDXへの対応など課題が山積するなか、
企業経営の舵取りはますます難しくなっている。
グループ全体で30万人以上の従業員を抱える通信大手の日本電信電話(以下、NTT)も例外ではなく、最適解を求めて試行錯誤を繰り返しながら、
新たな経営スタイルへの変革を模索している。
その一環として創設された「NTT University」について聞いた。
[取材・文]=菊池壯太 [写真]=NTT提供
NTTグループが打ち出す「変革」の方向性
NTT Universityは、次世代経営人材育成のための取り組みである。その具体的な内容を説明する前に、創設に至った背景として、NTTグループが打ち出す最近の経営・人事に関する変革の方向性を確認しておこう。
まず、With/Afterコロナの社会を見据えて、エンゲージメント向上とワークインライフを推進し、サステナブルな社会実現への貢献を目標とする。そのための取り組みとして、①市場でも通用するプロフェッショナル人材の確保・育成、②多様性の確保、③リモートワークを基本とする働き方(Work from Anywhere)の3つを掲げている(図1)。
このうち、「多様性の確保」の目標を数値で見ると、まず女性登用については、新任管理者は2021年度に30%(うち管理者比率は2025年度に15%)、役員女性率は2025年度に25~30%。外部人材・中途採用率は2023年度に30%、グローバル人材育成については2025年度に200名(2020年からの累計)、データ活用高度人材育成は2023年度に2,400名の確保を目指す。NTT Universityの選抜においても、この多様性は特に重視されている点である。
リモートワークを基本とする働き方にも力を入れている。リモートワークが中心になれば、転勤が不要となるほか、働く人の事情に合わせて生活のなかに仕事を組み込むワークインライフも実現しやすくなる。現在、すでにグループ全体で7割程度の従業員がリモートワーク中心で働いており(5月取材時点)、これを維持・拡大していく方針だ。
年功序列の社員資格制度からジョブ型へ
以上の変革に加えて、NTT Uni-versity創設の重要なきっかけとなったのは、新たな人事制度の導入だ。
①全管理職へのジョブ型人事制度の拡大(2021年10月~)
NTTグループでは2021年10月、全管理職を対象に、職務遂行能力をベースとした年次・年功的要素を含む「社員資格制度」を廃止し、会社の事業運営方針や事業計画に基づき、ポストの職務を定義したうえで、職務の重さに応じて設定されたジョブグレードに基づき処遇が決定される制度を導入した。この「ジョブグレード制度」の導入について、NTT University創設に関わった総務部門人事・人材開発担当部長の須藤博史氏は次のように説明する。
「改定前の社員資格制度では、人の能力が下がることは想定されておらず、基本的に降格はまずありませんでした。一方、ジョブグレード制度は、ポストと給与が連動した形になります。ポストの要件は時代と共に変化しますが、ポストの要件が変われば、当然そこでメンバーに必要とされる能力も変わってきます。よって、時代の要請に合わせたスキルを身につけられない人はグレードダウンせざるを得ないのです。その半面、新しい分野で知見のある人材を登用したり、ポストの要件に見合った外部の人材を新たに採用したりといったことが、機能的に行えるようになります」