第8回 エンゲージメント向上につながる労働環境 木下達夫氏 メルカリ 執行役員CHRO|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
一筋縄では解決ができない人事・人材育成のお悩み。
今日もまた、中原淳先生のもとに、現場の「困った!」が届きました。
今回のテーマは「エンゲージメント向上につながる労働環境」です。
前回に引き続き、ゲストにメルカリCHRO木下達夫氏をお迎えし、
リアルな現場のお悩みに答えていきます。
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=メルカリ提供
「働きがい」と「働きやすさ」2つの観点でデータを検証
中原
今回も順調に問題だらけの現場ですね(笑)。エンゲージメントを向上させたいけれども、問題山積でもはやどこから手をつけたらいいのかわからない、とのことですが、木下さんはどう思われますか?
木下
まずはこの会社の経営陣が、エンゲージメント向上について、本気で取り組もうとしているのかどうかをお聞きしたい気がします。経営陣が「エンゲージメント向上が組織のパフォーマンス向上につながる」といった方程式を持っているならば、なんとかして長時間労働を止めようと考えるはずだからです。経営陣がそうした意識を持っているかどうかは、この問題に取り組むにあたっての大前提となるように思います。
中原
おっしゃる通りですね。メルカリではエンゲージメントを、どのように考えていますか?
木下
メルカリにはCX(顧客体験)とEX(従業員体験)という言葉があります。フリマアプリとして後発だったメルカリが短期間で成長できたのは、顧客にとってより便利により使いやすく、といったところにこだわり、様々なやり方でCX(顧客体験)を進化させ続けてきたからです。CXを高めれば、継続的に使ってもらえるようになり、顧客のエンゲージメントを高めることができます。CXを高めるためには、それをつくり出す従業員の体験(EX)もより良いものにしていく必要がある。だからEXを高めなければならない、というのがメルカリの考え方です。経営陣もそのことを認識しているので、従業員のエンゲージメントデータを気にしています。
中原
どのようなエンゲージメントサーベイを行っているのですか?
木下
3カ月に一度エンゲージメントサーベイを行っています。エンゲージメントは「働きがい」と「働きやすさ」両方の観点から考えていく必要があります。そこで、それぞれの観点からの設問を用意し、どの設問がエンゲージメントの総合指標に影響を与えているのか、相関を見ています。多少の順位変動はありますが、「働きがい」については、「やりがい」「成長実感」「ミッションやパーパスへの共感」との相関が高いことがわかっています。一方、「働きやすさ」については、「マネージャーとの関係」「自分の働く場所や時間をある程度自分でコントロールできるかどうか」に相関が高いことがわかっています。