人財投資は減らさない。技術の進歩が速い時代だからこそ、大切なのは人間力 廣田幹人氏 ALSOK 新潟綜合警備保障 代表取締役社長
安全・安心という目に見えない商品を扱うからこそ人間力が大切だと語る廣田氏。
そう考えるきっかけとなった忘れられない出会いとは。
実際に人間力がある人財を見抜き、
育てるための取り組みについて話を聞いた。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=増井友和
警備の技術が進化しても、ジャッジするのは人
―― まず初めに、御社の事業と課題について教えてください。
廣田幹人氏(以下、敬称略)
我が社は新潟県内のありとあらゆる場所でお客様に安全・安心をご提供しています。三本柱は、個人のお客様向けのホームセキュリティ、法人、医院、商店、事務所などのお客様向けの機械警備、そして施設管理警備です。たとえば空港やプラント、大学、デパート、現金輸送……等。すべて警備の対象になります。
地方において、上記三本柱は成熟市場となっています。県内では我が社より少し先に創業された競合他社と市場を二分していますが、警備は装置産業なので、一度入れていただいた後はほぼ替わりません。たまに発生する新規のお客様も、大手の競合や、異業種から参入してきた電機や設備系の会社と厳しい競争になり、大きな成長は見込めません。
チャンスがあるのは、これまでと違ったチャネルやアイテムです。最近引き合いが多いのは防犯カメラ。画質が良くなって、人の指先の動きまで見えるようになりました。それにAIを組み合わせたシステムも期待が大きい。たとえば「1人だけ進行方向と逆に歩いている」「不自然な大きさの荷物を持っている」と画像解析で危険を予測して現場のスタッフに伝えることができれば、事件を未然に防げるかもしれません。警備は成熟市場ですが、視点を「事後」から「事前」に移せば、十分に成長の余地があります。
―― 警備は労働集約型のビジネスであり、人が重要なリソースです。しかし、新分野では技術が差別化要因になっていくのでしょうか。
廣田
技術は大切です。我が社は独立採算ですが、ALSOK(綜合警備保障)と資本提携しており、新分野の技術開発においても、高い知見を頂いております。
ただ、技術がいくら進化しても、警備で最終的にジャッジを下すのは人です。きちんとジャッジができる人を据えてこそ、新しいツールも価値を発揮できます。人財への投資を増やしこそすれ、減らすことは考えていません。人の力がモノを言うのは、社員約800人のうち600人を占めるセキュリティスタッフだけではありません。他に営業系や管理系、技術系の社員がいますが、新しい分野では特に営業の人間力が求められるでしょう。新しい提案をするには、まずお客様が何を必要としているのかを理解しなければなりません。そしてお客様に腹を割って話していただくには、人間関係の構築が不可欠です。
もともと私たちは、安全・安心という目に見えない商品を扱っています。形のあるものならスペックや価格で判断いただけますが、安全・安心はグラムいくらの世界ではない。お客様に価値を感じていただくには、私たちを信頼していただくしかありません。人間力はもっとも重要な要素であり、今後も変わらないのではないでしょうか。
トップ自ら採用活動の前線に立つ
―― 人間力のある人財をどのように確保、育成していますか。
廣田
重視しているのは新卒採用です。私が総務部長として父が創業したこの会社に戻ってきたのは今から26年前です。当時は市場が急拡大していて、猫の手も借りたいほどに忙しく、書類の不備がなければ誰でもウェルカムで採用していました。おかげで多様性があって面白かったのですが、一方でビジネスマナーがおろそかな人も少なくありませんでした。