気楽に、ポジティブに。不安定な時代だからこそ、リーダーとして行動し続ける 川端克宜氏 アース製薬 代表取締役社長 CEO
「臆せず変えればいい」
その言葉とともに前社長から42歳の若さでバトンを受け取った川端克宜氏。
当時大きな負債を抱える「白元の事業」を買収し、
日用品カテゴリーに乗り出すなど、事業構造の転換も大胆に進めてきた。
常に変化し続ける企業を率いるトップのリーダーとしての考え、人への想いとは。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=松井一真
好調の源はコロナ特需ではない
―― 2020年12月期から2期連続で最高益を更新する見通しと好調ぶりです。報道では「コロナ禍の中でも」という“枕言葉”が必ずついていますね。
川端克宜氏(以下、敬称略)
もしコロナ禍が起こっていなかったら、どうなっていたでしょうね。私個人の感覚としては、コロナという外部要因がなかったからといって、当社のここ3年の成長が帳消しになるとは思いません。コロナの前から、それぐらいの手応えがありました。
18年に社長就任以来唯一の赤字決算を出しましたが、我々はその経験をもとに、様々な変化を伴う取り組みを一気に加速させていたからです。
確かにコロナ禍の下では、それが追い風になった企業とそうならなかった企業のどちらかしかありません。我々が前者であることは事実です。人々の在宅時間の増加や衛生意識の高まりは、暮らしのなかで効果を実感する体験型の商品を扱う当社にとって、特需となりました。しかし、かねてより進めてきた構造改革や商品づくりの成果が、「コロナのおかげ」だけでかき消されてしまうことには正直、忸怩たる思いがあります。
―― アース製薬といえば「虫ケア事業」。いわゆる殺虫剤の会社というイメージでしたが、衣類の防虫剤や保冷剤「アイスノン」で知られる「白元の事業」を買収されました。
川端
虫ケア事業の比率は、いまや売上の約3割。それに並ぶ収益の柱とするべく、白元を買収。従来当社にはなかった日用品カテゴリーの育成・多角化に注力し、海外展開も加速してきました。「昨日の成功で明日の飯は食えない」のがビジネスの常ですが、それにしても昨今の変化は速い。好調に甘えることなく、もっとチャレンジしていかなければいけません。
「臆せず変えよ」と突然の抜擢
―― 42歳の若さで、初のプロパー社長に抜擢。オーナー一族が経営を担ってきた会社を「変える」のは、相当な勇気が要ったのでは?
川端
社長でも、部長・課長でも、ポジションには前任がいます。間違えてはいけないのは、前任者がやってきた、いいことも悪いこともまずは受け止めたうえで、変えるべき点を変えることです。ともすると、外野の期待の声ばかり耳に入ってきますから。それに迎合して、何でもいいから変えなければ、と闇雲に走るとコケやすい。むしろ「変えなくていいものもあるよね」という話が冷静にできるかどうかが大事だと思います。
とはいえ、いま振り返ると、私が引き継いだときは、やはり会社自体変わらざるを得ない時期でしたね。川端が社長になったから変わったのではなく、誰がなっても現状維持はありえなかったでしょう。