第25回 経営と人材育成は一体 “お客さま本位”の経営理念を指針として 佐藤 透氏 日本郵政 郵政大学校 研修部長
日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険といったグループ各社を統括する日本郵政。
同社の教育機関「郵政大学校」の研修部長である佐藤透氏は、民営化前は公務員として着実なキャリアを築きながらも、役人然としない人物だ。
「お客さま本位」を考え続けた佐藤氏のキャリアと、同社の改革の要諦を聞いた。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=山下裕之
“キラキラ”はなぜ消えたのか
日本郵政グループの社内研修機関「郵政大学校」の研修部長、佐藤透氏には忘れられない光景がある。旧郵政省へ入省した直後、現場実習で入ったある郵便局。幹部候補職員が、長期研修を終えて帰ってきた。
「戻ってきたときに、目がキラキラしていたのがすごく印象的だったんです。でも、そのキラキラがしばらくすると消えてしまって……。なぜだろうと思いましたね」
佐藤氏が配属されたのは旧東京郵政局の人事部訓練課。先述の幹部候補が受けていた研修など、階層ごとに様々な研修を行う部署だった。
「着任早々に意見交換会が開かれ、現場実習で見て感じたことを率直に発表したら、上司に驚かれました。『なぜ入ったばかりの君にわかるんだ。まさにそれが、研修の課題なんだよ』。そう言われたのが原点で、ずっと記憶に残っているんです」
研修での学びや気づきが現場では埋もれてしまう。その問題に佐藤氏はいち早く気づいていた。そんな佐藤氏が現職として役割を担う郵政大学校の創設は1965年。前身の逓信官吏練習所時代から優れた人材を輩出し、選ばれたフロントラインの職員にも本省で活躍する機会を提供してきた。郵政民営化前に一時活動を停止したが、2011年に再開。
「郵便・貯金・保険と民営・分社化されたからこそ、研修を通してグループの一体感を醸成し、一体であることの強みを活かせる人材を育てなければならない。現在の郵政大学校の存在意義はそこにあります」