第21回 鍵はユーモアと透明性 テクノロジーを楽しむ先に描く未来 オードリー・タン(唐鳳)氏 台湾デジタル担当 政務委員
台湾のデジタル担当大臣として、様々なイノベーションを牽引するオードリー・タン氏。
市民と一体となった取り組みを進めるために、大切にしていることとは。
タン氏にとっての私らしさについて聞いた。
どこにもとらわれず目的に向かう
――2016年にデジタル担当大臣として入閣されて6年たちました。これまでを振り返って、現在の心境をお聞かせください。
オードリー・タン氏(以下、敬称略)
元気に、前向きにやっていますよ。今はパンデミック、インフォデミック(情報のパンデミック)から、新しい生活様式へと変わりましたが、2014年から私がパイオニアとして仲間と一緒にやってきたものが、実り始めているところです。
私の信条であるRadical Trans-parency(革命的な透明性)、そして、Voluntary Association(自発的な協働)、そしてTelework(テレワーク)、これは閣僚にも導入して、きちんと機能することが立証されました。
――様々な施策が実現して、入閣当初の目的はある程度果たされたかと思います。現在、目的の変化はありましたか?
タン
まったく変わっていません。公務員として公務を果たしていますが、私は政府と一緒に仕事をしているわけで、政府や政治家のために仕事をしているわけではありません。これは先ほどお話ししたVoluntary Association、つまり私から命令は出さないし、私も命令を受けないという意味です。
私はどこにもとらわれずに目的を示し、設定した目的に向かって動いています。ですので、今でも変わらず通信衛星のように動き続けていると理解してください。
――今回のコロナ禍では、ご苦労されたことも多かったのではないでしょうか。
タン
そうですね。ただ私の役割は、あくまでも補助的なものです。コロナ禍における主なゴールはすでに台湾CDC(Taiwan Centers for Disease Control:衛生福利部疾病管制署)で設定されていました。そのゴールとは、2020年には人口の3/4がマスクを着用すること、2021年5月には人口の3/4がコンタクト・トレーシング(接触歴追跡)できるようにすること。そして今は人口の3/4がワクチン接種をすることです。
台湾はワクチン接種が日本より遅れて始まりましたが、今日か明日には人口の3/4のワクチン接種が達成できると報告を受けています(取材は11月上旬)※。その他には、とにかく感染のリスクを下げること。今も取り組んでいますが、さらに改善するために、市民の理解を促進する取り組みを進めています。