第33回 今、目の前のことに向き合って明るく生きることが私らしさ 榊原郁恵氏 俳優
高校生でトップアイドルとしてデビューして以降、歌手、俳優として活躍の場を広げてきた榊原郁恵さん。
芸能界という特別な世界で多様な経験を重ねながら成長してきた榊原さんの私らしさとは。
[取材・文]=菊池壯太 [写真]=中山博敬
[スタイリスト]=坂能 翠 [ヘアメイク]=宮原幸子
突然飛び込むことになった芸能界
―― 長年、芸能界でご活躍されていますが、この業界に入るきっかけは何だったのですか?
榊原郁恵氏(以下、敬称略)
特に芸能界に憧れていたわけではないし、子どものころから歌のレッスンや芝居の勉強をしてきたということもない。この仕事を選んだ理由は、実は自分でもよくわからないんです(笑)。ただ、スター誕生!(1971年から1983年にかけて放送された視聴者参加型歌手オーディション番組)が放映されるあたりから、一般の人でも芸能界に挑戦できるという時代に入りつつあったので、心の奥底では「ああいう世界で自分自身を輝かせてみたい」という想いは持っていたのかもしれません。
―― そうしたなかで、高校2年生のときにホリプロのタレントスカウトキャラバンに応募されたのですね。
榊原
そうですね。月刊『明星』という芸能情報誌があったのですが、その付録の歌本の裏表紙に、第1回タレントスカウトキャラバンの応募要項が載っていたのです。それを見て、「やってみようか」と軽い気持ちで友達と一緒に応募しました。親にも相談しないで(笑)。いま思うと、不思議な衝動ですね。
タレントスカウトキャラバンは、全国から割と幅広い年齢層の男女約1万5,000人が応募したようで、かなりの高倍率でした。私は関東地区の予選にまず参加したのですが、2人代表に選ばれたなかの1人に残ってしまったのです。本当に「なんで私が?」という感じでしたね。そして本選はテレビで放送されると聞いて、「えらいことになった」とそのときようやく気づいたのです(笑)。
―― 当時は高校生。思ってもいない進路になっていくわけですね。
榊原
3年生への進学を前に三者面談も終わっており、先生や親には、将来は進学して幼稚園の先生を目指すと話していました。ごく普通に高校生活を送っていた矢先のことだったのです。
全国大会は各地区で選ばれた男女12人が集まって歌と演技の審査によってグランプリが決まるという、最終オーディションでした。オーケストラをバックにお客さんの前で歌うという初めての経験だったので、やはり緊張しました。