第20回 求め続けたのは仕事の本質 想いを引き出す成功への方程式 大藪寛己氏 共立ホールディングス 人事本部長
今回の主役である大藪寛己氏は、大手医薬品メーカー出身。医療現場での激しい競争とグローバル化の荒波に揉まれながら、人の持つ力の可能性を自分なりの哲学で見いだしてきた。新境地での奮闘も含め、これまでのキャリアに迫った。
仕事の本質に気づく上司の言葉
共立ホールディングスは、動物用医薬品等の開発・製造・販売・輸出入を手掛ける共立製薬のほか、9つのグループ企業を擁する。そのグループ人事の統括責任者が大藪寛己氏である。親しみやすい語り口のなかに、時折熱を帯びる様子から、仕事にかける強い想いが伝わる。
その大藪氏だが、同社歴はまだ3年に満たない。定年後もしばらく在籍していた武田薬品工業での手腕を買われ、今のポジションに就いた。
聞けば、キャリアは青天の霹靂の連続だ。始まりは大学入学時にさかのぼる。何度か受験にチャレンジするも力及ばず、希望学部とは異なる薬学部に進学。心機一転、年下の先輩がいる体育会系クラブに入部を決意した大藪氏は、クラブに溶け込むためには「年齢とか学年とか、成績が良かったとか、妙なプライドは邪魔なだけ。この時点で捨てることにしました」と語る。
失敗の悔しさを知っているだけに、成功へのこだわりは強い。目指すのは結果オーライではなく、実のある成功だ。この考えに至ったのは、就職して最初の上司の教えが大きい。
武田薬品工業入社後はMR(医薬情報担当者)職として大学病院の担当になったが、医師との面談や情報提供のために診察前の早朝から手術等が終わる深夜まで病院に貼りつく毎日。なぜここまで働くのか自ら疑問を持ちつつも、「拾ってくれた会社に恩返しのつもりでまず3年間は必死に働く」と決めたなかでの上司の言葉は、強く心に響いた。
「『大藪、単なる売り子になっては絶対にダメだ』と強く言われましたね。売れれば偉いとか、何でも許されるとか、そういう考えは捨てなさいって」