社会課題の解決には技術だけでなく人間力も必要感性を持ったDX人材を育成 足立正親氏 キヤノンマーケティングジャパン 代表取締役社長
ITソリューション事業を成長の中核とする事業ポートフォリオへの転換を進めるキヤノンマーケティングジャパン。
足立正親社長にこれからの人材に必要な要件や、社内研修「DX人財育成塾」等の取り組みについて聞いた。
─コロナ禍によるビジネスへの影響はいかがですか。
足立(正親氏、以下敬称略)
昨年は本当に厳しい対応を迫られました。コンスーマ向け製品は、コロナ禍で行楽や入学式等のイベントがなくなり、カメラを使う機会が減った影響を受けました。また、オフィス向け製品もテレワークで出社する人が減ったことで、複合機やプリンターの需要が減りました。4~5年先だと想定していたことがこの1年で一気にやってきた印象です。今後コロナの影響が一段落したとしても、ビジネス環境が元に戻ることはないでしょう。
ただ、社会の大きな変化は革新的なことが起きる契機にもなります。今回もアフターコロナに向けて、多くの企業がいわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)などにより、ビジネスモデルや業務プロセスの変革に取り組んでいます。求められているのは、単にアナログをデジタル化するデジタイゼーションではなく、デジタル技術を利用してビジネスモデルの変革を促すデジタライゼーションです。私たちはコロナ禍以前からITソリューション事業を成長の中核と位置づけ、事業ポートフォリオの転換に取り組んできました。外部環境は厳しいですが、ソリューション提供企業の立場で言えば、これは大きなチャンスでもあると捉えています。
─事業ポートフォリオの転換にあたっての課題とは。
足立
当社グループはキヤノンという信用やブランド力がある一方で、キヤノン製品以外の様々な商材も取り扱っており、お客さまの課題に合わせて最適な解決策を提供する、いわばソリューションの百貨店のような存在でありたいと考えています。しかし、これからは同じ百貨店でも“目玉がある百貨店”にならなければなりません。いくつかの得意領域をつくることによって、市場への発信力が高まったり相乗効果が生まれたりします。お客さまから「この件はキヤノンマーケティングジャパンにお願いしたい」と最初に相談される会社にしたいと考えています。
そこで大事になるのが、人の問題です。お客さまに最初に相談される会社というのは、お客さまに期待され、愛される、魅力のある会社と言い換えてもいい。そのような会社になるには、そこで働く社員自身が、社会やお客さまから期待される人でなければいけません。そうした想いを込めて、今年4月に発表した長期経営構想では、2025年ビジョンとして「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」を掲げました。同時に発表した中期経営計画においても、戦略的投資として「事業投資」「システム投資」「人材投資」を設定しました。なかでも重要なのは「人材投資」です。ハードウエアの販売はスペックや機能で差別化できますが、ソリューションは提供する者がお客さまのビジネスや業界をよく知るプロフェッショナルでなければ価値を高めることはできません。得意領域を決めて器だけ準備しても、競争には勝てない。人の育成は非常に大きな課題だと捉えています。