皆が“事業家”として挑戦し続ける社風を絶やさない 髙橋 和夫氏 東急 取締役社長 社長執行役員
2022年に創立100周年を迎える東急。
鉄道、商業施設、ホテルなど、その事業範囲は広いが、東京有数の大都市・渋谷を「世界のSHIBUYA」にすべく、大規模再開発を行っていることで知られる。
2018年度からの中期経営計画では、持続可能な成長を目指す基本方針としてサステナブルな「街づくり」「企業づくり」、そして「人づくり」を掲げている。
具体的にはどのような人材育成を行っているのか、髙橋和夫社長に聞いた。
グループ全体で雇用を維持し、乗り越える
─コロナ禍で経済も影響を受けています。現在の経営課題を教えてください。
髙橋(和夫氏、以下敬称略)
世間ではコロナ禍が追い風になっている企業が全体の15%、影響がない企業が20%、ダメージを受けている企業が残りの65% と言われています。当社は様々な事業を展開しており、東急ストアのように生活インフラとして地域のお役に立てている事業は好調です。また、インターネット事業も巣ごもり需要を受けて、健闘しています。
一方で、鉄道やホテルなど、人を集合させるような事業は大きな影響を受けています。鉄道は10月時点で前年の75%ほどしかお客様が戻っていませんし、東京の大きなホテルは30%ほどの稼働率です。鉄道は今後もしばらく100%には戻らないでしょう。当社は他社に比べ定期利用の戻りが遅いのですが、テレワークをしている方が他の沿線より多いからではないかという仮説をもっています。
理由はともあれ当面は元に戻らないとすると、ビジネスモデルや事業構造を変えて損益分岐点を下げなくてはいけません。そのための施策を上期中に整理をして、目下着手しています。人件費の圧縮は決して容易ではありませんが、雇用の確保は絶対条件として、たとえばホテルの人材に東急ストアで働いてもらうなど、人材の流動化を図りながらグループ全体での最適化に努めているところです。
─経営環境が激変する時代に求められるのは、どのような人材でしょうか。
髙橋
やはり環境変化にすばやく適応できる人材でしょう。そのためにも生産性の高い働き方が重要だと考えています。生産性の高い働き方に向けては自律性が欠かせません。当社はコロナ禍の前から経営計画の重点施策において「働き方改革」を打ち出し、テレワークを推進するなど、働き方の多様化を推進してきました。
具体的には当社沿線を中心にサテライトオフィスを設けて、2年前でも十数%がテレワークを行っていました。コロナ禍でピークは80%、いまは50%がテレワークですが、今後も状況に応じた柔軟な働き方が選択できる環境を整えていきたいと思います。