成長とは“気づきの量”。「明日の伸びしろ」を持つメンバーと共に描く未来 山田敏夫氏 ライフスタイルアクセント 代表取締役
ライフスタイルアクセントが展開する「Factelier(以下、ファクトリエ)」は、工場と直接提携し、職人こだわりの一流品を適正価格で販売する、工場直結ファッションブランドだ。
コロナ禍でも成長を続けるブランドはどのような人々によって運営されているのか。
採用や人材育成について、代表取締役である山田敏夫氏に話を伺った。
人々の心の温度を上げたい
―― コロナ禍はアパレル業に大きな影響を与えました。ファクトリエの戦略にも変化があったでしょうか。
山田敏夫氏(以下、敬称略)
コロナはアパレル業界に2つの変化をもたらしました。1つは、フォーマルからカジュアルへのカテゴリーシフトです。コロナ禍でスーツやドレスを着る機会が減り、代わりに在宅でくつろげるイージーな服、さらにアウトドアやゴルフウェアが伸びています。
もう1つの変化は、販売チャネルです。百貨店やショッピングセンターが営業自粛しましたし、路面店があっても街から人が減って、Eコマース型に変わらざるを得なくなりました。
幸い、「ファクトリエ」はコロナ禍でもマスク需要などがあって売り上げを伸ばすことができました。しかし、カテゴリーのシフトについては十分ではありません。スーツとカジュアルウェアでは縫製技術が異なるため、工場は簡単に生産商品を転換することができません。いまも構成の入れ替えに挑戦中です。
ただ、直近のトレンドへの対応は枝葉末節の話です。コロナ禍でも、ここ数十年に起きている大きな変化に目を向けることが大切ではないでしょうか。
―― 大きなトレンドとは何ですか。
山田
1990年代に8,000円だった1着あたりの単価は、いまや3,600円と半分以下になりました。市場全体の売り上げ規模は変わっていないので、供給量は倍以上に増えています。価格が安くなって消費者は商品を手にしやすくなり、ワークマンさんのように伸びている会社もあります。
一方、日本人の幸福度は下がっていて、G7では最下位です。経済的な発展に、心の温度が伴っていないのです。
ファクトリエが、「語れるもので日々を豊かに」というミッションを掲げているのも、心の温度を上げたいからです。「語れるもの」には、誰かに語りたくなるものと、長く持つことで自分に語りたくなるもの―― たとえば「この名刺入れは初めて就職したときに買った」といったエピソードがありますが、相手が誰にせよ、何か語りたくなるものを届けることで、人の心の温度を1度でも上げたい。そこは常にやり続けなくてはいけない本質的なところです。
コロナ禍で、心の温度を上げる新しい取り組みを始めました。買った人が工場に応援メッセージを送れる仕組みをつくったのです。2020年4月は6,000件のメッセージが集まって、確かに心の温度が上がったのだと感じています。ただ、それ以降月に届くメッセージ数は増えていません。コミュニケーションのとり方は、もっと工夫の余地があるのかもしれません。
全社員の前で「Will」を語れる人材を採用
―― 人々の心の温度を上げるには、どのような人材が必要ですか。
山田
プロフェッショナルなスキルだけでしたら、外部の人に協力していただくことが可能ですから、社内のメンバーとしてこだわりたいのはマインド面です。求めている人材をひと言でいえば、「明日の伸びしろがある人」。さらに突き詰めれば、「素直さと謙虚さがある人」です。素直で謙虚なら人の声に耳を傾けて学ぼうとするし、学び続ける人はいくつになっても成長の余地があります。
実際、ファクトリエのチームに年齢は関係ありません。名古屋星ヶ丘テラス店のコンシェルジュは62歳で、品質管理には70歳近い社員もいます。2人とも、いまもどんどん成長し続けていますよ。