リーダーは、謙虚に、好奇心をもって慣れ親しんだしくみを変える 平井一雄氏 サンプラネット 代表取締役社長
エーザイのサービス系グループ会社として、創薬の探索研究支援から販売に至るまでのサポートや、学会・研究会の運営、 また健康関連商品の販売等を行うサンプラネット。
親会社から自立した経営を進め、 安定した成長を遂げるための改革を行うのは、7年前に社長に就任した平井一雄氏だ。
社員に求める意識改革や、 人材育成への考えとは。
「外販」に活路を求めた7年間
─エーザイグループの一員として、多彩なビジネスを展開しています。その事業構造の特徴を、あらためてご紹介いただけますか。
平井(一雄氏、以下敬称略)
当社は、もともとエーザイの各研究所や工場の近くにあった子会社5社が、2002年に合併して誕生しました。現在、事業の7~8割を占めるのはいわゆる「内販」で、グループ企業に向けて各種サポートやサービスを提供しています。
その柱の1つは、エーザイの創薬研究活動や製品製造などを支援する委受託業務。ある程度、定額の売り上げが立つビジネスです。一方で、グループ内の“商社”としての役割も大きく、研究機器類などを調達してエーザイに販売していますが、こちらは出来高業務なので、業績の不安定化は否めません。要するに、エーザイが機器購入の予算を絞ると、売り上げに響くんですね。
─社長もエーザイのご出身だけに、双方の事情がおわかりになる。
平井
はい。エーザイも2000年代後半には、認知症と胃潰瘍の新薬で市場を席巻し 右肩上がりでした。しかし特許が切れると、ジェネリック(後発医薬品)が出て市場を奪われてしまいます。7年前、私がこちらへ赴任してきたころには、サンプラネットに使える予算はほとんどなく、当社の売り上げも過去最低を更新したほどです。
ですから、内販に依存せず、自立した経営にシフトしなければ、安定した成長は望めません。そこで私は就任以来、グループ以外のお客様に向けたビジネスの成長、つまり「外販」の強化に取り組んできました。
─外販にはどのようなビジネスがあるのでしょう。
平井
大きいのは、学会や研究会の運営サービスです。会に参加されるお医者様の移動や宿泊の手配など、すべてをサポートしています。
ただ、今般のコロナ禍で学会自体の中止や延期が相次ぎ、この業務も変化への対応を求められました。たとえば昨年の感染第1波の際に急遽、社屋に配信スタジオを設け、オンラインで会を運営するシステムを立ち上げたのです。いち早く集合方式から転じたことが奏功し、現在はスタジオの稼働率も順調に伸びてきています。
何が正しいのか、本質の追求を
─グループに依存せず、自立した経営を進めるために、社員には何を求めていますか。
平井
赴任したときの第一印象は、社員が良くも悪くも「素直すぎる」ということでした。エーザイから言われたことを言われたとおりに、いかに早く、正確にできるか否かで評価されますので。何でもハイハイと素直に聞きすぎていたんです。
7年間、社員にずっと言い続けてきたのは、親会社に言われたからといって、それが本当に正しいのか。本質は何かを考えてほしい。「言われたからそのとおりにやりました」とか「昨年と同じです」ではなく、むしろ相手の要求を咀嚼したうえで、もっといい方法がありますよ、こうした方がいいんじゃないですかと、提案できるようになってほしいと伝えてきました。