第17回(最終回) 「チームワーキング:ニッポンのチームをアップデートせよ!」Webセミナーレポート 田中 聡氏 立教大学 経営学部 助教|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
データから導き出されたチームワークの新常識とは? 2021年3月10日、本連載から派生した書籍『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』刊行記念Web セミナーが開催されました。
中原淳氏と共著者である立教大学経営学部助教の田中聡氏が登壇しました。ここではそのセミナーの模様を一部ご紹介します。
チームワークに新たな知見を
Webセミナーには日本全国から様々な組織の人事・人材育成関係者約230名が参加。テーマについての関心の高さがうかがわれます。
初めに、中原淳氏が登場。チームワークについての書籍を執筆したきっかけを、話し始めました。
「現代は先行きが見えないVUCAの時代といわれます。新型コロナによって現在も2カ月先、3カ月先がどうなっているかわからないような状況です。そうしたなか、チームがうまくいかない、チームワークが機能しないという声があちこちで聞かれるようになりました。いま、日本の至るところに『チームの機能不全』という危機が迫っています」(中原氏)
背景には、日本企業で働く人たちが、変化の激しいビジネス環境のなかで目標を見失いがちになっているうえに、働き方の多様化やリモートワークにより職場やチーム内でのコミュニケーションが希薄になり、働きがいが薄れている現状があるといいます。
このようなチームの機能不全状態を解消するには、「まず管理職、リーダーだけがチームを率いるという発想ではなく、すべてのひとびとがチームワークに関する知識とチームを動かすスキルを身につける必要があります」と中原氏。
チームワークにかかわる知見としては、段階的なチーム発達の在り方を示した「タックマンモデル」、結果の質を高めるためには関係の質を高めることが重要とする「成功の循環モデル」など、海外の研究者によるものが知られます。
しかし「これらのチーム理論は仮説に過ぎないものも多く、また日本の組織内で実証されていないものもあります」と中原氏は指摘。
「我々は、日本のチーム研究から得られた知見をベースとした新たなチーム理論にアップデートする必要があると考え、立教大学経営学部の大規模チーム調査から新たな知見を得ようと研究をスタートしました。そこで生まれたチームワークにおける新たな概念が『チームワーキング』です」
「チームワーキング」に必要なOSとアプリとは
中原氏は続けて、「チームワーキングとは『Team メンバー一人ひとり』が主体的にダイナミックに『Working(動いている)』状態を示す概念」だと説明。チームを「チームワーキング」の状態に導くためには3つのOSと3つのアプリが必要だといいます。