第3回 小さなチームの始め方、大きな組織の動かし方 中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
急成長を遂げるベンチャー企業では、チームの形も急速に変わります。
リーダーシップにおける変化のフェーズを追いました。
ユーグレナはいかにして生まれたか
今回お邪魔したのは東大発ベンチャーとして知られるユーグレナ。世界で初めてミドリムシの大量、かつ、安定的な培養に成功したバイオ企業です。
ミドリムシ(学名:ユーグレナ)とは藻類の一種。光合成を行う植物でありながら動物の性質を持ち合わせ、59種の栄養素を有しています。ユーグレナは、ミドリムシの食品や化粧品として販売を手がける他、バイオ燃料への応用研究を行っています。
創業のきっかけは、社長の出雲充氏が東大の学生時代にバングラデシュを訪れたこと。深刻な「貧困問題」に直面した出雲氏は「世界から食料問題をなくしたい」という志をもちました。農学部へ転部し、栄養価の高い食品を探していたところ、サークルの後輩であり、共に創業者である鈴木健吾氏からミドリムシの話を聞いて可能性を感じ、一緒に研究をスタートさせます。
卒業後、出雲氏はいったん、大手銀行に就職するも1年で退職。大学に残った鈴木氏と研究を続けるなか、実家でクロレラ販売会社を営む福本拓元氏に出会います。ライブドアの支援もあり、2005年8月、出雲氏、鈴木氏、福本氏の3人でユーグレナを設立しました。
しかし、それからまもなくライブドア事件が起こると、関連企業と見られていた同社は経営危機に。苦難の時期は3年に及びました。まったくミドリムシが売れなかったのです。このとき、営業担当の福本氏は「目標達成できなければ辞める」と宣言し、猛烈な営業攻勢を展開、会社を懸命に支えたといいます。こうした活動が実を結び、徐々に販路は拡大し、さらに伊藤忠商事から出資を受けることもできました。
2012年、ユーグレナは東証マザーズに上場、2014年には東証一部への上場を果たします。起業時、3人だったチームは、現在では社員数(グループ)約400名の企業となりました。会社を率いてきた出雲氏は今、チームとしての会社の成長をどう見ているのでしょうか。
スタートアップは“ 奇数のチーム” で
中原:
ユーグレナは3人で創業なさっています。出雲さんは過去のインタビューで「スタートアップのメンバーは奇数がいい」とおっしゃっていますが、これはどういうことですか。
出雲:
当時はヒトもモノもカネもブランドもありませんでしたが、ただ1つ信じ続けたのは、「量が質に転化する」という有名な弁証法の法則でした。スタートアップではとにかくいろんなことに挑戦するしかないのです。そうした試行錯誤の段階でやりがちな失敗が、偶数チームで多数決を取ることです。
中原:
多数決で決めるのは良くない?