一人ひとりの「自問自答」力を育て 多様な個を活かす組織へ 中村公大氏 山九 代表取締役社長
ロジスティクス、プラント・エンジニアリング、オペレーション・サポートと、3つの事業分野を有機的に展開する大手総合物流会社、山九。
製鉄所や化学系プラントなどの建設から操業支援、物流、メンテナンスとワンストップサービスを提供する。
「考える力」を引き出し、育むことで成長を目指す100年企業の人づくりについて、中村公大社長が語った。
変化の時代を考える力で乗り越える
─2018年に創業100周年を迎えられました。
中村(公大氏、以下敬称略)
100年前から先輩方が種をまき、水や肥料をやって大切に育んできたからこそ、いまの当社グループがあります。しかし、同じ場所にとどまっていることはできません。新人時代、上司に「現場は生きている、1日として同じ日はない」と言われ続けましたが、現場も、そしてお客様を取り巻く状況もどんどん変わっていきます。
たとえば国内ではインフラの老朽化が問題になっています。石油プラントの寿命は20~30年といわれていますが、一番新しいコンビナートも、完成からすでにその倍近い年数がたっています。コストの高い日本で工場を建て替え、将来にわたって操業を続けるのか、それとも海外移転するのか。多くの企業が岐路を迎えています。少子高齢化も深刻です。AIやIoTが進化するこれからは、人と機械のすみ分けについても考えなければなりません。
では、変化の激しい時代、何を武器に戦えばいいのでしょうか。私は「考えること」に尽きると思います。
お客様には様々な選択肢があります。天秤にかけたとき山九の皿が下に来るようにするには、「お客様にとって山九を選ぶメリットとは何か」を考えなければいけない。現場の情報を集約し、さらに良いサービス、かゆいところに手が届くサービスを常に考え、提案し、実行することだと考えています。
相手の立場に立って考える「自問自答」
─考える力はどのように育てていますか。
中村
当社グループでは創業期から考えることを重視してきました。社訓は「公言実行・自問自答・感謝」。「公言実行」とは目標を公にして実行すること。そして、「自問自答」は相手の立場に立って物事を考えることを意味します。「感謝」は自分を取り巻く人々への感謝の念を忘れないこと。新入社員研修では社訓を基軸とした人間力の醸成を行っていますし、海外現地法人でも同様の教育をしています。よくお客様から従業員の人間力をほめていただきますが、社訓三原則が人間力の土台として根づいているおかげだと思います。
ただ自分としては、いまの時代は順番が違うのではないか、という気がするのです。「自問自答・公言実行・感謝」の順ではないかと。