第12回 経験は確実に糧になる 一生学び、一生育つための機会を提供したい 谷本 恒大郎氏 SB C&S コーポレート管理本部 人事部 部長
ソフトバンクグループにおいて、創業時からのビジネスを受け継ぐSB C&S。
人事部トップの谷本恒大郎氏は、新たな環境を求めて6年前に転職し、現職に至る。
谷本氏のキャリアは、挑むことをやめない、アグレッシブなものだった。
「源泉は人」だと悟った新人のころ
SB C&S は、ソフトバンク創業時から続く、IT 商材の流通事業を受け継ぐ企業である。同社で、人事部部長を担う谷本恒大郎氏は、ひと言で表現すれば、“走り続ける人”といえるだろう。
新卒で入社した前職の警備会社は、文字どおり体育会系の社風だった。今から20年近く前ならなおさらである。新入社員はすべて、入社時は警備の現場に配属された。それは国立大学で情報工学を専攻していた谷本氏も例外ではなかった。
谷本氏が担当したのは、オフィスビルや店舗、自宅などに設置されるセキュリティーシステムの警備員。センサーが感知した異常を受け、現場に直行する役割だ。24時間体制でシフト勤務を敷き、勤務中は何度も出動する場合もある。だが、利用者が担当者とかかわる機会は多くない。
「警備をする側にとって何十、何百とある顧客対応のうちの一件が、利用者にとっては一生に一度のことにもなり得ます。だからこそサービスの本質は人に尽きると実感する毎日でした。特に印象に残っているのは、あるお年寄りの利用者の方から『あなたが来てくれてよかった』と言われたことですね。あのときのホッとされた表情は忘れられません。ましてや警備はお客様から鍵をお預かりしていますから、信頼あって成り立つサービスです。従業員一人ひとりの倫理観や顧客視点の醸成を、組織としてどう培っていくかは、新人なりに大きなテーマだと感じました」(谷本氏、以下同)
谷本氏が人事に興味が湧くのも自然な流れだった。
1年半の現場業務の後、希望が叶って人事部に異動となる。当時は社内の人事制度に、大幅なテコ入れをした時期だった。在籍していた4年は、ほぼ人事制度の変更に携わることとなる。
「ただ正直言うと、当時のことはあまり覚えていないんですよね。評価が社員のモチベーションに大きく影響すると理解していましたが、とにかく目の前のことに精いっぱいで。視野が狭くなっているのを感じていました」