OPINION2 日本の制度のここがヘン?! 「男性の働き方」を見直せば 男女共に活躍できる
「仕事の内容、勤務地が限定されていないうえ、長時間残業も辞せず」
実は、女性のキャリアを阻むのは、男性社員の滅私奉公的な働き方だった―。
日本企業の制度に潜む根本的な問題とは? また、具体的な解決策とは?
海外との比較から、家族社会学の専門家、筒井淳也氏が語った。
男性の働き方が問題
子どもを持つと、多くの女性は不本意ながらマミートラック(26ページ参照)に乗らざるを得ない。つまり産休・育休前と比べて残業などの負担が少なく、責任も軽い役職に就く。出産前のように男性同様の働き方をし、男性と同じだけの労働時間をこなすことが難しくなるからだ。
その最大の理由は日本企業が「男性の働き方」に女性を引き込もうとしてきたからである。
男女雇用機会均等法で提唱された働き方改革の目玉は、男女差別の撤廃である。従来の男性の仕事領域への、女性の参入を狙ったものだ。とはいえ、そのままでは育児期の女性の負担が大きいので、1992年に育児休業法が施行され、1995年には全事業所に適用された。ところが、男性主導の働き方自体は変わらなかったため、育児休業から復職した女性の多くは、結局キャリアを手放すことになった。
こうした問題は日本特有の現象ではなく、かつてのヨーロッパも似たような状況に陥っていた。ただし、彼らは男性の働き方を改めることによって問題を解決した。この前例を踏まえるなら、男性の働き方が変わっていない日本では、育児支援の充実だけでは女性が活躍するのは困難だろう。求められるのは、現状のスタンダードな働き方(男性的な働き方)を、女性も働きやすいようにシフトしていくことだ。
そこで、以下からは女性活躍が進むヨーロッパ、さらにアメリカとの比較から、日本における働き方を見ていこう。
欧米と日本̶働き方に違い
日本企業に定着している男性の働き方の特徴は、“無限定性”にある。すなわち勤務内容、勤務時間、勤務地などが限定されておらず、労働者は企業の命令に従わなければならない。これは欧米とは全く異なる制度である。
欧米では場合によっては成果主義を適用しているものの、基本的に職務給制度(職務内容に応じて賃金を決定する制度)を採用している。
職務給制度とは、一言で言えば、仕事に対して報酬が支払われる制度だ。この場合の仕事とは成果ではなく、特定の職務に就いていることを指す。職務、つまり仕事の責任の範囲が明確化されているため、自分の専門スキル、知識を活かしながら、経験を積むことが可能だ。
したがって、たとえ一時的に仕事を辞めたとしても、フルタイムで再就職することは日本より容易といえる。勤務地も基本的に定められているため稀ではあるが、例えば妻が遠くに転勤することになったとしても、夫がその赴任先で働き口を見つけ、家族で移住する―という方法もとれるだろう。
職務給制度を適用している一般的な従業員の場合は、労働時間についても、枠がはめられていることが多い。EUでは残業を含み週48時間が上限である。中でもフランスは週35時間労働が基本だ。管理職はヨーロッパもアメリカも労働時間が長くなりがちだが、後述するように、労働時間帯は自分の裁量で調整できることが多い。