空気を一変させるリーダーは厳しい事態ほど明るく 前向きな意志を言動で示す 辻 範明氏 長谷工コーポレーション 代表取締役会長
日本において、マンションという居住形態を広く普及させてきた長谷工コーポレーション。長期ビジョンを策定し、2030年3月期に、ハードとソフトの両面から「住まいと暮らしの創造企業グループ」へと飛躍することを目指す。
その実現に向け、人材育成においては「自律人材の継続輩出と、将来の長谷工を担う多様な人材を育成する」をスローガンに掲げ、強化している。
4月より代表取締役会長に就任し、育成戦略を担当する辻範明氏に、求めるリーダー像とその育成方法について聞いた。
「走りながら考える」DNAが強み
─2020年度は不穏な情勢下での幕開けとなりました。幾多の危機を経験されてきた辻会長は、難しい時期だからこそ“人”に期待される部分も大きいのでは。
辻範明氏(以下、敬称略)
当社は過去に、修羅場・土壇場・正念場の3つの場を経験し、私もその試練の渦中にいました。ただ、私個人に関していえば、自分で選んで当社に入ったわけですから、何があっても自己責任。危機に陥ったら、むしろ自分の力で会社を変えて、「自分の選択はやっぱり正しかったんだ」と思いたい。そういう気概だけは若いころからもち続けてきたつもりです。
当社にはまだ、足りない部分も多々あります。しかし、「ここが長谷工の弱みだな」と気がついたら、自らが然るべき立場について組織を変えていけばいい。そういう発想ができる人材に、今こそもっと出てきてほしいですね。
─問題を指摘したり批判したりするだけでなく、当事者として行動してほしいと。
辻
そう、“評論家”は要りません。目標を決めたら最後まで粘り強く、一心不乱に頑張り抜くのが、長谷工社員のDNA。できない理由を挙げ出したらその時点で思考停止でしょう。自分の会社は自分で良くする、とにかく動きながら考えて、何とかするんだという強い意志を全社員が共有していたからこそ、先に述べた3つの場を乗り越え、マンションの施工実績No. 1の座を今日まで守り続けてこられたのだと思います。
もちろん、過去の方法論が、今後にも当てはまるとは考えていません。事業環境の変化の速さ、激しさは従来の比ではなく、しかも今般の新型コロナ禍のように、不確実性や複雑性も格段に増大しているからです。─新たな中期経営計画(2021年3月期~2025年3月期)でもそうした厳しい情勢認識に基づき、事業モデルの再構築を表明しています。
辻
少子・高齢化や人口減少、コンパクトシティ化の進展、自然災害の激甚化などにともない、中期経営計画期間中のマンション市場はかつてない変化が予想されます。席に座っていながら時代の先の先まで見通せるならいいけれど、それは高名な経済学者でも至難でしょう。当社は当社らしく、「走りながら考える」文化をもって対応する方が現実的です。たえず現場を動き回り、世の中の風を体で感じながら、迅速果断に現状を改革していく―そのための人づくり、組織づくりに注力しています。