「変えるをよし」と鉄道魂で 貨物の未来を切り拓く 真貝康一氏 日本貨物鉄道 代表取締役社長 兼 社長執行役員
産業構造、技術革新、労働力不足――あらゆるものが変化にさらされる時代、貨物鉄道を取り巻く環境もまた移り変わろうとしている。
「守るべきものは守り、変えるべきものは変える」と語るのは、2018年、社長に就任した真貝康一氏だ。
異色の経歴をもち、東日本大震災では東北支社長として指揮をとった同氏に、経営改革の基本方針、人づくりの理念について聞いた。
「お客様」「現場」の2軸で改革
─2018年6月に代表取締役社長兼社長執行役員に就任されました。経営方針を教えてください。
真貝康一氏(以下、敬称略)
私が社員に向けてよく言っているのは、「変えるをよし」です。実は、JR 貨物は経営的に厳しい局面に立たされた時期もあります。そのため何かを変えたくても、お金をかけて投資することが難しく、断念せざるを得ない面がありました。
しかし、現在は投資できるだけの体力がようやく付きつつあります。2016年度、2017年度は、貨物鉄道事業は黒字化を果たしました。連結でも2期連続で経常利益100億円以上を達成しています。これからは前例主義に縛られるのではなく、変えなければと気づき、気づいたことはどうすべきかを考え、積極的に変えていかねばなりません。社員の意識改革、企業風土改革を含めて、現在、経営改革に取り組んでいるところです。
─具体的にどのようなところを変えていくのでしょうか。
真貝
重要なのは「お客様」と「現場」という2つの軸です。
「お客様」とは、お客様のニーズにこたえる商品をどのようにつくっていくのか、という軸です。「現場」とは、机上の論理ではなく、現場で起きている実態を把握し、いかに現場の声や知恵を汲み上げて経営に生かすか、という軸です。
それぞれをもう少し具体的に説明しましょう。国鉄分割民営化から30年以上が経過しましたが、貨物鉄道の社会的役割は変わりません。むしろ、その役割を従来以上に求められる時代になりました。持続可能な地球の在り方が求められるなかで、CO2排出量がトラックの約11分の1である鉄道輸送の優位性は、ますます高まるはずです。また、近年は人手不足で物流全体の労働力確保が社会問題化しています。中長距離で安定期に大量輸送できる貨物鉄道の出番はさらに増えるでしょう。
こうした社会的な変化に合わせて、リードタイム、輸送の品質、プライシングなどの面でお客様のニーズにどうやってこたえていくのか。それが「お客様」を軸に考えるということです。
たとえば私が営業統括部長のころ、それまで各社バラバラに輸送していたビールの共同輸送を開始しました。共同輸送を実現するには、製造や保管も含めてサプライチェーンをお客様と一緒になって見直さなくてはいけません。こうしたソリューションは、受け身の営業では難しい。お客様を軸にして、ソリューションを提供したからこそ生まれたサービスです。