まちづくりは人づくり。個性や得意分野、可能性を 最大限に引き出したい 吉田淳一氏 三菱地所 執行役社長
総合デベロッパーとして、不動産を軸にしながらも新しいビジネスにも意欲的に取り組む三菱地所。
時代の要請や社会の課題に対して、魅力あるまちづくりに取り組むために、どのような人財が求められるのか。
人事部門で長年の経験をもつ吉田淳一社長に、社員一人ひとりが生き生きと働き、活躍するための人財育成論を聞いた。
まちも人も、いろんな個性があった方が面白い
─吉田社長は人事部門で長年の経験をおもちです。御社の求める人財の素養についてお聞かせください。
吉田淳一氏(以下、敬称略)
我々総合デベロッパーの使命は、まちづくりを通じて社会に貢献することです。まちの魅力が様々なように、人もそれぞれ個性や得意分野をもっています。いろんな人がいた方が組織は面白い。社員一人ひとりが、自分の個性や得意なことを生かせる分野で頑張ってもらいたいと思っています。
弊社では、求める人財の要素として「志ある人」「現場力・仕事力のある人」「誠実・公正である人」「組織で戦える人」「変革を起こす人」の5つを挙げています。とはいえ、この5項目をレーダーチャートにしたとき、きれいな五角形を描く人を求めているわけではありません。もちろんこの5つについては一定の素養をもっていてほしいですが、尖っている部分があっていい。きれいな五角形を求めすぎると、没個性になってしまいます。社員一人ひとりの尖っている部分が異なる方が、組織全体としては付加価値を生み出せると考えています。
─組織を束ねるリーダーの役割についてはどうお考えですか。
吉田
実は、私自身「リーダー」という言葉があまり好きではありません。リーダーというと、メンバーよりもその分野に精通していなければいけないと思いがちですが、弊社のような幅広い事業を展開している会社では、1人のリーダーがすべての分野を網羅するなんて不可能です。また、すべて自分が決めるというタイプのリーダーでは、まちづくりはうまくいきません。
社員一人ひとりが個性や尖った部分を仕事で発揮する経験を積み上げることで、より個性や得意分野も際立つようになり、付加価値につながると思います。社内外の異なる個性や尖った部分を最大限伸ばして活躍できるように、メンバーをコーディネートするのがリーダーの役割でしょう。具体的には、働きがいのある職場環境を整えたり、成長の阻害要因になるようなものを取り除いたりして、だれもが活躍できる好循環をつくれる人がリーダーだと思います。
必要なのはコラボするコーディネーター
─新たな中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)のなかで、さらなる成長に向けたビジネスモデル革新を挙げられています。人財面において今後、より強化していきたい部分は。
吉田
本質的な部分は変わりませんが、社会環境が激変するなかで、オフィスやまちに求められるものも変化しています。今後はIoT やAI といった、弊社がこれまで専門としていなかった分野でもビジネスを推進していく必要があります。自分たちの力だけでは限界があるので、ベンチャーやスタートアップ企業など、外部とコラボレートして新しいビジネスを生み出すオープンイノベーションに力を入れているところです。
その土壌づくりの1つとして、ベンチャーやスタートアップ企業と共同で新事業を生み出していくCAP(Corporate Accelerator Program)を実施しています。2年目となる2018年も200社以上から提案があり、すでに具体的なサービスとして実現しているものもあります。