人を残すことこそ自分の役割。好奇心を引き出し 皆で一歩踏み出す組織へ 千葉尚登氏 プリマハム 代表取締役社長 社長執行役員
豊富な次世代人材育成プログラムのもと、海外研修等、人材育成に注力しているプリマハム。
2018年から社長を務める千葉尚登氏は、人を残すことを経営の重要課題とし、就任時より「人材の質の強化」の重要性に言及してきた。
自身は組織の「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ジャンプ」を担うと語る千葉氏に、具体的な取り組みや、伊藤忠商事時代に岡藤正広氏や丹羽宇一郎氏から受けた薫陶などを踏まえた人材育成の考え方や想いを聞いた。
─現在の経営課題を教えてください。
千葉(尚登氏、以下敬称略)
直近の業績は順調です。我が社はスーパーに卸す商品の比率が高い。コロナで直撃を受けた外食向けはもともと取引が大きくなかったため、業績にネガティブな影響はほとんどありませんでした。
しかし、今順調だからと言って油断はできません。我が社は20年前、倒産しかけましたが、伊藤忠商事(以下、伊藤忠)が中心となって再建案をつくり、実行しました。当時の従業員は厳しかったと思いますよ。外から人が来て、人員を含めたコストカットをしましたから。ただ、それで10年弱かけてようやく利益が出る体質に戻りました。
そのころ、私の前任の松井(鉄也)社長が就任し、今度は従業員の自主性を尊重した様々な活動を推進しました。もちろん企業の体力を回復させたからできたわけです。そうして従業員のやる気が高まったところで、2018年に私が社長を引き継ぎました。私はいわば「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ジャンプ」を担っています。
一般的に「財を残すのは三流、業を残すのは二流、人を残すのが一流」と言われますが、当社は先輩たちの尽力により、ようやく最終段階のジャンプまでたどり着くことができました。
ジャンプの中身は「人」です。人を育てて残すことが、今の重要な経営課題だと考えています。
前例主義から脱却して好奇心をもつ人材育成を
─人材について、現在はどこに課題があると考えていますか。
千葉
一言でいうと、前例主義で、ガラパゴス化しつつあった社風や組織を変えていく必要があると思っています。私がプリマハムに来て最初の経営会議で驚いたのは、環境問題が議題の1つに挙がっていたのに、ペーパーレスについて触れられていなかったこと。他にも、テレビ会議のシステムは入っているのにほとんど活用されていないなど、時代についていけていなかった。
コロナ禍で世の中は大きく変わりました。たとえば私たちのお客様の購買行動も、お店に行くだけでなく、商品をネットで購入されることが以前に比べて増えました。このような変化に対応してビジネスも変えていく必要があります。
別に難しいことを求めているわけではありません。私は伊藤忠時代に海外に駐在していたときから、グループ会社の経営会議にテレビ会議で参加していましたし、今も出張先からスマホを使って参加しています。
私自身、タブレットやスマートウォッチ等の新しい技術が使われたものは、発売されたら使ってみるようにしていますが、身近なところから好奇心をもって何事も試してみることが大切です。
要は、変わろうとする意識があるかどうか。変化を前向きにとらえて、好奇心をもって新しいことに一歩踏み出すことができる人を育てていきたいですね。