リーダーは明るく。 どんなときも顔を上げて歩け 平野 耕太郎氏 日立建機 代表執行役 執行役社長
新興国をはじめとする国や地域などの海外売上が増える一方、
顧客のニーズが急速に変わりゆく建設機械業界。
変化に対応し、ビジネスモデルを変革するには、“全体観をもつリーダー”を育成しなければならない。
次世代の建設機械ビジネスを牽引する日立建機執行役社長、平野耕太郎氏に
トップとしての心構え、人材育成論を聞いた。
新車販売以外の分野に商機あり
─現在の経営環境と課題を教えてください。
平野耕太郎氏(以下、敬称略)
我が社は主に建設機械と鉱山(マイニング)機械の2つの分野で事業を展開しています。また、海外売上高比率は約8割で、新興国が主な市場です。経済の浮き沈みが激しい国や地域が多いため、市場の需要の変動性が高く、新車の売り上げはアップダウンしやすいのが現実です。
そこで注目しているのが、お客様の意識の変化です。かつて建設機械は「パワフルである」「たくさん運べる」「よく掘れる」といった特徴が重視されましたが、最近はそれらに加えて、「事故をなくしたい」「故障を防ぎたい」「現場の生産性を高めたい」といったニーズが強くなってきました。我々メーカーが工場で意識していることが、建設や採掘の現場でも意識されるようになってきたわけです。
こうしたニーズにおこたえして、現在、新車販売だけでなく、レンタルや中古車販売、メンテナンス、故障や消耗の予知といったサービスを提供しています。一種のコンサルティングですね。
─具体的にはどのようにコンサルティングするのでしょうか。
平野
たとえば従来、お客様に「10台買ってください」と言っていた場面で、「あと半年でお客様の他の現場から4台戻ってきます。つなぎとして半年間、4台をレンタルし、6台買うことにしてはいかがですか」といった提案をすれば、お客様とより長い関係を築いていけるはずです。
新車販売以外の売上高は2016年度実績で35%でしたが、現在の中期経営計画では、2019年度に50%に上げることを目指しています。
―ICTの活用にも積極的です。
平野
ICTを活用したダンプトラックの自律運転について、現在、オーストラリアでダンプトラックを実際に動かし、試験しています。採掘現場は基本的に私有地で、公道のような規制がありませんから、ある意味、自動車より実証実験が進んでいるのです。当初の予定通り1年後には実用化に漕ぎつけたいですね。
―実現すれば労働力や安全の確保といった業界における課題も解決できそうです。
平野
故障や消耗の予知の研究も進んでいます。建設機械は油圧を機械全体に送り出して動くため、そのオイルを送り出す油圧ポンプが故障すると、機械全体にダメージを受けてしまいますし、何より作業がストップして損害が出ます。
しかし研究の結果、オイルの状態を365日24時間、センサーで監視し、過去の履歴データと照らして、危険なタイミングを事前にご連絡できるようになりました。