第4回 やる気のスイッチを押す手伝いを 本人が自分で成長する 環境やきっかけをつくるのが人事の役割 平本智也氏 ドトールコーヒー 管理統括本部 人事部 部長
ドトールコーヒーで人事制度をはじめ、数々の改革を実行する人事部部長の平本智也氏。「人を生かすのは人」という平本氏に、人の成長にとって大切なことは何か、聞いた。
前職での厳しい経験を教訓に
共に働き、共に成長してきたはずの仲間が、ある日突然“敵”になる――。30代そこそこで、会社組織というものの苛酷な一面と向きあった経験が、自分にとって大きな転機となり、糧にもなったと、管理統括本部人事部部長の平本智也氏は振り返る。
「もともとマネジメントへの興味が強かったんです。そこで前職では、若くても支店運営を任せてもらえるところに惹かれ、当時急成長中だった人材派遣会社に入社しました。途中から人事に転じ、教育研修部門の新設にも携わりました」
ところが、在籍8年目、飛ぶ鳥を落とす勢いだった会社が危機に陥り、和やかだった職場が、一気に修羅場と化したという。
「調子がいいときは仲間でも、一つ間違うと業績はおろか、職場の人間関係まであっけなく壊れてしまう。『会社とはこういうものか』と思い知らされました。当時は人事部に所属していたわけではなかったのですが、人事の在り方についても考えさせられました。社員のために何をすべきなのか、何を伝えなければならないのか。私にとっては教訓になっていますし、あのころ考えたことは、今にもつながっていると思います」
もはや、企業に所属していれば安泰という時代ではない。平本氏が、苦いはずの経験を貴重な教訓と言い切れるのは、誰もが自律して働き、成長できる環境づくりに、より意欲を燃やしているからだ。