人材教育最前線 プロフェッショナル編 自ら走り続けたからこそ生まれた 女性が自信を持てる育成
2008年、富士通グループはFUJITSU Wayを改定し、「社員:多様性を尊重し成長を支援します」と明記して、ダイバーシティの推進を宣言。ダイバーシティ推進室を設置した。富士通グループの人材育成機関、FUJITSUユニバーシティの木村博美氏は、その立ち上げメンバーに参加。特に、女性の活躍支援を担当することとなった。木村氏が中心となり、2011年度にスタートした「女性リーダー育成プログラム」は、今年で5期目を迎える。プログラムに生かされた自身の体験、思いとは。
ダイバーシティ推進の特命
富士通グループで「女性リーダー育成」を推進する木村氏が大切にするのは、“思いのマネジメント”だ。一人ひとりに仕事に対する強い“思い”があれば、社員は成長し、新しい価値をもたらす。多様化する社員の“思い”を育てる教育こそ、会社の成長に必要不可欠と同氏は考える。
1989 年、富士通に入社。仏文学科出身ながらSEになりたいという願いは叶わず、富士通グループの社員を対象に人材教育を行う教育訓練部に配属された。こうして教育畑でのキャリアがスタートする。「入社1年目で担当したのは新入社員、中堅社員を対象とするビジネス研修の企画運営です。研修内容など全く分からず、早く経験を積みたい、早く年を取りたいと思っていましたね」
その後、階層別研修や、成果主義の導入に伴う研修、eラーニングの運営など、社員教育に関連する仕事に携わってきた。2007 年にマネージャーに昇進。女性管理職としてさまざまなプロジェクトを推進してきた木村氏に、ダイバーシティ推進の“特命”が下ったのは2008 年のことだ。
「技術職の多い富士通はもともと女性社員が少ない会社。私が入社した時の新人研修では1クラス約50人の参加者のうち文系出身の女性は2人でした。現在、女子社員比率は15%ですが、管理職の女性の比率は5%ほど。私の現在のポジションであるGM(事業部長級の資格)になると、女性は天然記念物のトキのように希少です(笑)」
意思決定のポジションに女性がもっと増えれば、女性ならではの新しい発想やイノベーションが起きる可能性が高まるはず、と同氏は言う。
100カ国以上に展開し、全世界に17万人の従業員を持つグローバル企業の富士通は、当然、国籍、人種のダイバーシティは進んでいる。一方で、性別のダイバーシティは遅れがちだった。この現状を改善すべく、当時マネージャーだった木村氏に白羽の矢が立ったのである。
3つの要因に焦点を当てる
さっそく全社員を対象に意識調査を行ったところ、結果は惨さん憺たんたるものだった。
「『自分の能力に自信があるか』という質問に対し、20代前半で『ある』と回答した人の比率は、男女で大きな差はありません。しかしキャリアを重ねれば重ねるほど、その差はどんどん開いていくことが明らかになりました。また、『幹部社員(マネージャー)になりたいか』の質問では、『なりたくない』と回答した女性が圧倒的多数でした」
さらに、木村氏らダイバーシティ推進室は女性のキャリア意識について聞き取り調査などを行った。その結果、見えてきたのは次の3つの現実だった。
①ロールモデルの欠如
リーダーとして活躍する女性が少ないため、女性がキャリアを磨き続ける道筋が見えにくい。
②キャリア意識の低さ