従業員の“ハピネス”と顧客の“感動”が繁盛を生む 粟田貴也氏 トリドールホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO
粟田貴也氏
2025年、「従業員の幸せ」と「顧客の感動」の好循環を生み出す「心的資本経営」を打ち出し、注目を集めたトリドールホールディングス。
「丸亀製麺」をはじめ複数ブランドを展開する同社の創業者で代表取締役社長を務める粟田貴也氏に、起業時の思いや企業成長を支える人材と組織のあり方を聞いた。
[取材・文]=本間 幹 [写真]=中山博敬

人生を変えた飲食業との出合い
―― まずは創業時の思いについてお聞かせください。国内外で1,000店を超える店舗を擁する「丸亀製麺」などの飲食ブランドを率いる立場ですが、なぜ飲食業に人生を賭けることを決意されたのでしょうか。
粟田貴也氏(以下、敬称略)
「飲食業って、自分の人生を変えることができるんじゃないか」と思ったのが、きっかけでした。
飲食業に携わる前は、工場や建設現場、警備員など、高校時代から様々なアルバイトを経験しましたが、働くことに対して、なんとなくネガティブなイメージを抱いていたのです。どの仕事も自分が何を作っているかわからないし、自分の仕事が何に役立っているのかも実感できないな―― と。そして、社会に出たら、ずっとそういう思いをしなければならないのかという暗澹たる思いを抱えていた大学時代、喫茶店でアルバイトをすることになりました。ここで働くということに対するイメージが大きく変わったのです。
飲み物や軽食を提供すると、お客様はおいしそうに味わってくれる。常連のお客様からは「頑張っているね」と声をかけてもらえた。つまり目の前にお客様がいて、自分がやったことへの反応がダイレクトに返ってくるわけです。そのような経験を通して、仕事にやりがいを感じるとともに、社会の一員になれたような実感を得たのを覚えています。それで、「この仕事なら自分の人生を変えられる」と強く思ったのです。
自分で言うのは少し気が引けますが、せっかちで、楽天的な性格です。この道でやっていこうと決めたら、すぐに行動に移さずにはいられない。そこで大学を中退して、飲食店を始める決断をしました。
―― さすがの行動力ですね。
粟田
働く楽しさにすっかり目覚めてしまい、学業を全うするよりは、少しでも早く飲食業界に身を置くことが大切だと感じたのです。「店1軒くらいは回せるだろう」という根拠のない自信もありましたね。いま思えばなんとも見通しが甘いわけですが、当時は本気でそう考えていました。
しかし、開業資金がありませんでした。そのため資金を貯めるべく、配送会社で働きました。休む暇もなく働いたおかげで、みるみるうちに資金は貯まり、1985年、23歳の時に、兵庫県加古川市に、「同様のお店を3軒はもつ」という志を店名に込めた焼鳥居酒屋「トリドール三番館」をオープンしました。

