連載 誌上コンサルティング 第46回 経営トップの理解を得て 次世代経営者の育成を進めていくには

Q.
いま、次世代の経営者育成を意識した研修を導入する企業が多くなってきました。当社では階層別研修や課題別研修(財務、マーケテインクなど)はそれなりに体系化し、実施しているのですが、経営者育成を意識した研修は、まだ実施しておりません。ビジネスの環境が目まぐるしく変わる現在、気力・体力がみなぎり、意思決定のスピードも速い若い経営者を育成していくべきだと考えているのですが、そもそも経営トップが、まだその必要性を感じていないようです。また、経営トップはこれまでも、研修にあまりかかわることがありませんでした。こうした状況下で、経営トップの理解を得て、次世代の経営者育成を意識した研修を導入・定着させていくにはどのように進めていけばよいでしょうか。
(商社・研修)
A.
ここ数年、次世代の経営を担う人材を育成することを目的に、30 歳~40 歳代のうちから将來が期待される社員を選抜して教育を行う企業が増えてきた。ご質問された方も、自社でそのような教育を行う必要性を強く感じているのであろう。
だが、「経営トップの理解を得るにはどうすればよいか」を考える前に、そもそもなぜ、次世代経営者を早期から育成する必要があるのかを整理してみたい。
ご質問には、「ビジネスの環境が目まぐるしく変わる現在、気力・体力がみなぎり、意思決定のスピードも速い若い経営者を育成していくべきだ」とある。確かに、感覚的には若いほうがエネルギーに満ち、意思決定のスピードが速いと思われる。実際、欧米の企業では、日本企業に比べてはるかに若い年齢層の人が経営の舵取りを行っている。また、日本の大手企業のなかにも、「20××年までに40 歳の社長候補を○ ○ 人育成する」という目標を掲げて、次世代経営者育成に取り組んでいる企業がある。
しかし、若ければ優れた経営力を発揮できるのであろうか。歴史的に見ても、後世に名を残すような優れた人物が、高齢になるまで現役で経営に当たった例は少なくない。「経営層の若返りが必要だ」と言うだけでは、「若ければ良いというものではない」と反論されかねないのである。若い経営者を育てること自体が、重要な目的にはならない。