学びには好奇心の刺激が必要 部分最適でなく全体でものを見るホリスティックなリーダーを育成 川村 肇氏 日立アカデミー 取締役社長
川村 肇氏
日立グループがめざすのは、社会インフラをデジタルで進化させ、新たな価値を創出する企業だ。その実現の鍵を握るのは、部分最適にとどまらず、全体を俯瞰して意思決定するための「ホリスティックな視点」を持つリーダーであると、グループの人財育成を担う日立アカデミーの川村肇社長は話す。
変革の渦中にある同社は、どのように人財を育て、学びの文化を根づかせようとしているのか。その戦略とリーダーシップ観を聞いた。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=山下裕之

リーダーに求めるのはホリスティックな視点
―― 日立アカデミーは日立グループの人財開発を担う事業会社です。成り立ちを教えてください。
川村肇氏(以下、敬称略)
日立グループにはもともとIT系、制御・プロダクト系、人財マネジメント系の3つの研修機関がありました。それらを2019年に統合して誕生したのが日立アカデミーです。
もともとグループの研修機関だったという性格上、売り上げのほとんどはグループです。一時期、研修プログラムを外に積極的に販売していた時期もありましたが、現在は日立のお客様に製品のトレーニングなどを提供する程度です。
日立グループで働く全世界28万人の従業員のうち、日本で働くのは11万人。海外のグループ会社を含めてグローバルリーダーシップのプログラムを提供していますが、現時点の売り上げは日本が9割を占めています。
―― 日立グループ全体では、どのような人財を育成しようとしているのでしょうか。
川村
日立はこれまでグローバルリーダーになることをめざしてきましたが、今やグローバルは前提であり、現在の経営計画(2025~2027年度)では、世界でどのような価値を生み出していくかというテーマが中心になっています。

それに合わせて今年4月にはビジョンを「社会インフラをデジタル技術で進化させ、環境・幸福・経済成長が調和する未来を創造する。」と改定しました。かつて日立はエネルギーや鉄道、デジタルサービスなどの組織がそれぞれ独立して事業を行ってきました。しかし、製品やサービスを提供して終わりというビジネスの集合体ではいけません。今後は、様々なものを融合したインフラストラクチャーをデジタルで進化させるグループをめざします。具体的には、Lumadaという基盤のシステムを展開しながら各組織が連携して社会に価値を提供していくわけです。
そのビジョンを実現するのはどのような人財なのか。日立では新しいリーダーシップコンピテンシーを定義しました。リーダーに求められるコンピテンシーはいろいろありますが、なかでも大事な要素の1つとして位置づけているのが「ホリスティック」です。自分の部門のP/Lさえ良ければいいというのではなく、もっと高い視点から全体を見て社会に新しい価値を創造していく。それができるリーダーを育成することが私たちの役割の1つです。

